そんなくだらないことを話してるといつの間にかデパートへついていたみたいで、人集りのすごい駐車場へ駐める。
そういえばこの人、全く変装してないけど大丈夫なのかな。一応人気アイドルなんでしょ?
ナヨンさんの前にあるグローブボックスからいつから入っていたか分からない帽子を手渡して運転席を立つ。
私が運転席から降りると少し焦ったように降りる準備をし始めるから、焦らなくていいですよの意を込めて助手席側の扉を開く。
するとまた動きが固まってこちらを見つめてくるから、いつもはしない微笑みサービス的なのをしてあげるとまた頬を染めて俯いてしまう。
何かボソッと言った彼女が少し顔を隠しながら助手席を降りる。
置いていかれないように彼女に釣られて運転席を降りると、いつの間にかスタスタと歩いて行ってしまうナヨンさん。
…置いてくなよ笑
気難しい顔をしている彼女の手を引いて、目の前にあるお店へと入る。
少し顔の赤い彼女が、お店に入った途端にキラキラと顔を輝かせるのが可愛くて可愛くて。
あの少しのヒントでこの人をこんな顔にさせられるなんて、
私はもしかしたらデートの天才なのでは?なんて自惚れてしまう。
中にはシックな服からカジュアルファッションまで取り扱っていて、
初めてきました風を装っている私も数えられないほどお世話になっている。
それだけ行っていれば勿論店員さんとの仲も良くなるわけで、今日ここにきたのは偶然ではなく必然である。
もう既にナヨンさんの欲しがりそうな服を裏で用意してもらっている。
あとはナヨンさんがその服に目をかけてくれるだけで全てが上手くいく。
こんなことを言っているとまるで私が悪い奴みたいに見られそうだけど、これも一応ナヨンさんのためにやっていることだから大丈夫でしょ。
そう思いながら私も見て回っていると、めちゃくちゃキラッキラした目で見つめるナヨンさんの目。
その先には…私が指定した服。
ナヨンさんの欲しがりそうな服。ドンピシャだったようで、私の予想よりも早く食いついてくれた。
ナヨンさんを試着室に押し込んで、知り合いの店員さんに持ってきてもらう。
絶対あれはナヨンさんの目にかかると思ってたし、絶対似合う。
今までどんだけの女性を見てきたと思ってんだ。
誰に向けたものでもない気合を控えめのガッツポーズに込めていると、カーテンの向こうからかなり弱々しい声が聞こえてきた。
あ、待って、なんていう彼女の言葉が聞こえてきた時にはもう遅い。
カーテンを開くと目の前には…どういう状況なのか少し理解し難い。
理解した時には速攻カーテンを閉めていて、なぜか私も中に入ってしまった。
だってこんな格好、私ですら見ていいか分からないのに他の人に見せられるわけない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。