少しずつ緊張が解けてくれたのか、可愛らしい笑顔を見せて。
笑うと歯茎見えるんだ...可愛い
少しだけ感じる関西訛りと、少し低めのその声と対話しつつ映画館へと車を走らせて。
ナヨンさんとは違って落ち着きがあるようで、向かってる最中はミナさんの方から話しかけてくることはなかった。
あるとすれば信号で止まった時くらい。それ以外はずっと外を眺めてる。
珍しい訳でもないだろうに、何か見つける度に小さくわぁ...と声を漏らしてるのもまた可愛らしくて。
それが無意識だって言うんだから、きっと高飛車ナヨンさんよりタチが悪いかもしれない。
ミナさんを隣に乗せて数十分。目的の映画館へ到着。
気付くと隣の人は寝息を立てていて、少し揺すっても目を覚まさないほどに深い眠りについている。
...どれだけ働き詰めなのか、こんなになるまで頑張れるなんて凄いな
五回程肩を叩くと、ようやく目を覚まして。
ここがどこだか分かっていない様子の彼女に説明すると、焦ったように車を降りる準備をし始める。
女慣れなんて女に言うことじゃないだろ...笑
彼女の発言に少しだけ疑問を抱きつつ、二人で館内へ。
約一時間後に上映される恋愛映画のチケットを購入した後、少し人混みから抜けた場所で休憩する。
予想通りの人混みで萎縮しているのか、さっきまでの笑顔はない。
大丈夫ですか?と声をかければ、ほんのちょっとだけ肩を上げて大丈夫です、と物凄く小さな声。
...その様子で大丈夫と言われて納得する人がいるのか
手繋いだくらいで顔赤くするとか、幼稚園生?笑
売店へ続く長蛇の列を眺めては、小さくため息をつく。
隣の人はメニューが見えないのか頑張って背伸びしてるけど、絶妙に見えないらしく。
諦めたのか、ストンとかかとを落として突然ソワソワし始めた様子。
今なら絶対手離せるのに離さない、結局この人も満更じゃない訳だ。
手を繋いだまま、一分に一歩なんて超スローペースで進む。
カウンター手前に着く頃には既に疲れ始めてる人もちらほらいて、隣の人は相変わらず綺麗な姿勢のままメニューを見てる。
案外可愛らしいことを言う。
そわそわしたまま手は離さず、そんな会話を交わすとまた小さく微笑んで。
ようやくカウンターまで辿り着けばまるで子供のように目を輝かせている。
たかが映画如きで...いつももっとキラキラする場所に立ってるのに笑
内心、ちょびっとだけ可愛いと思った自分を鼻で笑って。
差し出されたポップコーンとポテト、二人分の飲み物を手に、入場口へ向かった。
相変わらず可愛い人は、手を離す気配もない。
片手は彼女の手、片手は飲食物が入った籠。
...チケットは私の財布の中なのに、この人はどうやって入るつもりなんだろう
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!