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第19話

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2,757
2022/05/24 05:58
あなた
ミナさん?なんでそんなに眉顰めてるんですか?
ミナ
ミナ
すみません...疲れてるって知らなくて...
あなた
いやいや、ミナさんは私が誘いましたし。ミナさんが一緒にいてくれるだけで嬉しいですよ?笑
ミナ
ミナ
っ?!そ、それ...誰にでも言ってるなら最低ですからねっ...//
あなた
誰にでもって...笑 気になった人にしか言いませんよ
ミナ
ミナ
...ていうか、全然違うんですね
あなた
何がですか?
ミナ
ミナ
タメ口の時と、敬語の時で人が変わってる感じがします
あなた
そうですかね...まぁ、何年も一緒にいればそうなりますよ
ミナ
ミナ
...ちょっと、羨ましいです笑
あなた
羨ましい?変なことをおっしゃるんですね笑
ミナ
ミナ
あなたさんみたいな変な人に言われたくないです笑




少しずつ緊張が解けてくれたのか、可愛らしい笑顔を見せて。




笑うと歯茎見えるんだ...可愛い




少しだけ感じる関西訛りと、少し低めのその声と対話しつつ映画館へと車を走らせて。




ナヨンさんとは違って落ち着きがあるようで、向かってる最中はミナさんの方から話しかけてくることはなかった。




あるとすれば信号で止まった時くらい。それ以外はずっと外を眺めてる。




珍しい訳でもないだろうに、何か見つける度に小さくわぁ...と声を漏らしてるのもまた可愛らしくて。




それが無意識だって言うんだから、きっと高飛車ナヨンさんよりタチが悪いかもしれない。






























ミナさんを隣に乗せて数十分。目的の映画館へ到着。




気付くと隣の人は寝息を立てていて、少し揺すっても目を覚まさないほどに深い眠りについている。




...どれだけ働き詰めなのか、こんなになるまで頑張れるなんて凄いな




五回程肩を叩くと、ようやく目を覚まして。




ここがどこだか分かっていない様子の彼女に説明すると、焦ったように車を降りる準備をし始める。




あなた
焦らなくて大丈夫ですよ笑 まだ時間ありますし、見る映画も決めないとですから
ミナ
ミナ
す、すみません...まさか寝ちゃうとは、思ってなくて...
あなた
気にしないでください笑
あなた
先に館内入ってから見るの決めますか?
ミナ
ミナ
...人混みは、ちょっと苦手なので...ここでお願い出来ますか?
あなた
えぇ、勿論。普段どんな映画見ます?私結構ホラーとか見るんですけど
ミナ
ミナ
ほっ...ホラー...私も、よく、見ます...よ?
あなた
...ほんとですか?笑
ミナ
ミナ
...すみません、嘘です...
あなた
ですよね?笑 好きなジャンル教えてください。アニメもありますし、恋愛系とかもありますよ
ミナ
ミナ
じゃあ、恋愛系で...あ、でもあなたさんが見たいので大丈夫ですよ?
あなた
おぉ、いいですね恋愛系。私も最近見てませんでしたし、恋愛系見ましょうか!
ミナ
ミナ
いいんですか...?
あなた
いいですよ?笑 ミナさんと見るならなんでも楽しめますから
ミナ
ミナ
...やっぱり、タラシですね
あなた
ミナさんまでそんなこと言うんですか?
ミナ
ミナ
明らかに扱い慣れてますもん...女慣れしてますよね?
あなた
女慣れって...とりあえず中入りますか?笑 チケットも取らないとですし
ミナ
ミナ
そうですね、行きましょうか






女慣れなんて女に言うことじゃないだろ...笑






彼女の発言に少しだけ疑問を抱きつつ、二人で館内へ。




約一時間後に上映される恋愛映画のチケットを購入した後、少し人混みから抜けた場所で休憩する。




予想通りの人混みで萎縮しているのか、さっきまでの笑顔はない。




大丈夫ですか?と声をかければ、ほんのちょっとだけ肩を上げて大丈夫です、と物凄く小さな声。






...その様子で大丈夫と言われて納得する人がいるのか






あなた
...さ、ポップコーンとか買いに行きましょうか?
ミナ
ミナ
?!な、ちょっ、なんで手...//
あなた
その様子じゃいつの間にか人混みに埋もれてそうですもん。ちっちゃいし。
ミナ
ミナ
ち、ちっちゃ...?!
あなた
いいから、早く行きましょう?時間間に合わなくなっちゃいますよ
ミナ
ミナ
〜っ//ほんまに、タラシや......!




手繋いだくらいで顔赤くするとか、幼稚園生?笑




売店へ続く長蛇の列を眺めては、小さくため息をつく。




隣の人はメニューが見えないのか頑張って背伸びしてるけど、絶妙に見えないらしく。




諦めたのか、ストンとかかとを落として突然ソワソワし始めた様子。




今なら絶対手離せるのに離さない、結局この人も満更じゃない訳だ。




手を繋いだまま、一分に一歩なんて超スローペースで進む。




カウンター手前に着く頃には既に疲れ始めてる人もちらほらいて、隣の人は相変わらず綺麗な姿勢のままメニューを見てる。




ミナ
ミナ
...あなたさんは、ポップコーンとポテトどっち派ですか?
あなた
私は...気分ですかね、甘い物食べたい時はキャラメルポップコーンです
ミナ
ミナ
今日はどっちにします?
あなた
え〜...ポップコーン、ですかね
ミナ
ミナ
じゃあ...私はポテトにします。
あなた
じゃあ?
ミナ
ミナ
だって、二人で違うもの頼んだ方が、そっち食べたい!ってなった時に交換できるじゃないですか
あなた
おぉ〜...戦略家ですね?笑
ミナ
ミナ
普通ですよ?笑




案外可愛らしいことを言う。




そわそわしたまま手は離さず、そんな会話を交わすとまた小さく微笑んで。




ようやくカウンターまで辿り着けばまるで子供のように目を輝かせている。






たかが映画如きで...いつももっとキラキラする場所に立ってるのに笑






内心、ちょびっとだけ可愛いと思った自分を鼻で笑って。




差し出されたポップコーンとポテト、二人分の飲み物を手に、入場口へ向かった。




相変わらず可愛い人は、手を離す気配もない。




片手は彼女の手、片手は飲食物が入った籠。








...チケットは私の財布の中なのに、この人はどうやって入るつもりなんだろう


























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