第2話

悪夢
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2020/12/28 11:55
あなた

(ここはどこだろう?真っ暗で何も見えない…)

主、主、こちらへおいで。
俺が守ってやろう。
あなた

(誰?どこにいるの?あっ!声が出ない。)

後ろだよ主。明かりが見えるだろう?
あなた

(後ろ?本当だ明かりがある!そっちに行けば良いのかな?)

あなたが走り出した刹那、明かりがどんどん遠ざかっていく。下から吹き上がる風に、落ちているのだと気づいた。
あなた

(待って、あなたは誰なの?明かりがある所に行かなきゃ!行かなきゃ‼︎)

一生懸命手を伸ばしたが、明かりに手が届くことはなく、代わりに哀しそうな声が聞こえてきた。
また、し××××。
あなた

(え?今、なんて?)

目を開けると見慣れた天井が目に入り、今までのは夢だったのだと気づく。
三日月宗近
主、大丈夫か?魘されていたぞ。
主も怖い夢を見たのか?
あなた

[も]ってことは三日月さんもですか?

三日月宗近
ああ。世にも恐ろしい夢であった。
主はどんな夢を見たんだ?
あなた

私は…

あなた

(どんな夢だったっけ?)

あなた

すみません、忘れてしまいました。
怖かったことは覚えているのですが。

三日月宗近
そうか。怖いことは忘れるのが一番だ。
あなた

そうですね

三日月宗近
だが、俺はまだ覚えていてな。このままでは一人で眠れそうにないんだ。同じ布団で寝ても良いか?
そこで初めて三日月さんが枕を両手で握りしめていることに気がついた。
あなた

(付喪神と言えど彼は男性だし、断った方がいいと思うんだけど…)

三日月宗近
駄目か?
三日月が上目遣いであなたを見つめ、か細い声で尋ねる。
あなた

本当に怖かったんですね。良いですよ。

三日月宗近
ありがとう、主。
あなた

三日月さんの目、すごく綺麗ですね。

そう言ったあなたの目に光は無い。
三日月の目は美しく輝きあなたの目をじっと見つめ、口角が怪しくつり上がる。
だがあなたはそんなこと、知る由もなかった。

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