第19話

21:00
3,905
2020/11/09 09:38
💙 リク 🔪
あなた

はぁ…っ、はぁ…!

あなた

…っま、何時…ッ

夜道を走りながら、自身の右手につけてある腕時計を見ると、時刻は


『21:00』


を刺している。


どうせ急ごうと無駄だが、もっと遅くなると何をされるか分からない。


彼が怖い。でも、逃げられない。
あなた

…こんなこと、考えても…っ無駄、ッ

私は、更にスピードを上げて、彼が待つ自宅に足を進めた。





あなた

はぁ…っ、ふぅ…はぁ…っ

自宅の扉の前で、ゆっくり息を整える。


こんな息切れの状態では、急いで帰って来た、と見せつける様になる。それは彼にとっては不機嫌の調味料。





前、同じような事があった。彼からの着信も全部無視して、全速力で家に帰った。そうすれば許してもらえる、なんて思っていたから。


「電話も出ない。メールも返事がない。…しかも、こんな時間。なにしてたの?」


『…っい、急いで帰って来たから許して…っ』


「…は?」


そういうと、彼は私に近付いてきて、


「"急いで帰ってきた"?約束の時間はとっくに過ぎてるでしょ。なんの言い訳?それで許してもらえると思ったの?…っていうか、その息切れも。なんのアピール?」


私を見る彼の目は、光がなかった。
あなた

…よし。

ドアの前で拳を握って、気合いを入れる。


彼の前で脅えて逃げ出さないように。万が一、『別れたい』なんて口に出さないように。



──私は、普通の恋愛がしたかったのに。
あなた

ただいま。

家に響くように、大きな声で言ってみたが、物音一つしない。


前は玄関で座って待っていたのに…不思議に思いながら靴を脱いで、リビングに行く。


周りを見渡しても、あの青髪は何処にも見えなかった。
あなた

…拗ねちゃったのかな。

彼の部屋の前に立つ。コンコン、とノックをしてみる。


……


無反応。…静か過ぎて少し怖い。と思いながら、ドアを開ける。本当は、入っちゃいけないけど…



次の瞬間、私の目は、とんでもないものを捉えた。
あなた

…っに…これ…?

手錠、首輪、大人の玩具…そして、壁一面に貼られた私の写真。一枚一枚場面が違う。


震える手で、一番手元にある自分の写真を取る。
あなた

…仕事場?

なんでこの写真がここにあるの…?


よくよく見ると、


それは窓越しに撮られていた。
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あーあ、入っちゃ駄目って言ったのに。
あなた

っ!?

声のした方向を見ると、首輪と、見たことのない機械を持って笑う彼が居た。
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驚いた?僕はぜーんぶ知ってるんだよ、あなたの表情。
笑顔を絶やさず、ジリジリと近付いてくる彼。


私は反射的に後ずさる。
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今日、また時間過ぎたね。僕、悲しい…前はあんなに"お仕置き"して、体に叩き込んだつもりだったんだけど…また同じことするなんて。
あなた

ご、ごめんなさ…っ!

トンッ、と肩を押されて布団に倒れ込む。


自分の頭が早く逃げろ、と叫んでる。でも、足が言う事を聞いてくない。立ち上がって、走る事が出来ない。さっきまであんなに走っていたのに。


どうする事も出来ず、ただ彼の事を見つめていた。すると、
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まあ良いや。もう"お仕置き"はしないから。
と言って、笑う。
あなた

…えっ……

予想外の言葉に、心臓の音が静かになっていく。


その言葉にどんなに安心させられたか。自分でも驚くほど、安心していた。


だから、油断していたんだ。気付いていたのに。


彼の手にあったものに。





ピリッ
あなた

う"…ッ

そこで、私の意識は途絶えた。





























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…ふふっ、もう眠っちゃったの?かーわい♡

やっと、やっとだ…あなた。もう安心してね。あんな会社行かなくて良いから。僕がずっと守るから。
眠った彼女をそっと抱き締める。
僕の可愛いお姫様。
もうお仕置きは必要ないね。だって、



これからはずぅーっと一緒なんだから♡

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