鯨野碧衣、只今の体温39度8分。
まぁ、いいや。とりあえず、学校に連絡しないと...
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ピンポーン
家のインターフォンが鳴る。
ガチャッ
私は、凄く嬉しかった。
今まで、見舞いにくる人なんていなかったから。
視界が滲む。
友達か...。
今、私、凄く幸せ。
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皆はあの後も、ずっと私の家にいてくれた。
梓と二人きりになった。
...あれ?今まで、どうやって話してたっけ?
な、何か、緊張する...
私の両親。
私の両親は、事故で死んだ。
親戚もいない。
だから...
梓、黙っちゃった。
困らせたかな?
言わない方が良かったかも...
ギュッ
気付いたら私は、梓の服の裾を掴んでいた。
そして、無意識に、
『行かないで。』
とつぶやいていた。
困らせただろうか。
私のこと、嫌いになっただろうか。
どうしよう、どうしよう、どうしよう...
...え?
梓は微笑んでいた。
視界が滲む。
涙が止まらない。
過去の後悔と、梓への申し訳なさで
胸がいっぱいになった。
私、涙もろくなったなぁ。
ギュッ
突然、梓が抱きついてきた。
そして、何も言わずにただ、私の頭を撫でた。
梓の手は、温かかった。
まるで、
「大丈夫だよ。」
と言われたような感じがした。
その時、過去の後悔の重みが、少し
軽くなった気がした。
この気持ちは、何だろう。
胸が苦しくて、でも、温かくて...
この気持ち、梓には届かないで...
なぜだか、恥ずかしいから。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。