地下室にて
お兄ちゃんがそう言いながらメモをしている
私は先程までお兄ちゃんの『魅了の香水』の実験に付き合っていた
取り敢えず恥ずかしい事があったので何をしていたのかは省略しよう
直後、私は気分が悪くなってしまい顔を顰めて口元を抑える
お兄ちゃんメモの紙を放り投げて駆け寄ってくる
少し気分が悪くなってしまっただけだし、少し休めば回復するだろう
珍しく真面目な声色で言うお兄ちゃん
何で………バレるの………?
真剣な眼差しでじっと見つめてくるお兄ちゃん
あの日……『スー姉達が死んでしまった日』の夢では無い
その夢も偶に見るが今は違う
私は体育座りをし、顔を膝に埋めると首を横に振る
夢の内容は話せない
話すのが怖いから
小型通信装置で会話しているお兄ちゃん
私は顔を膝に埋めたままだった
傍に駆け寄ってくるカイ兄
私は微かに顔を上げる
どうして此処に………?
私は小さく頷く
私は微かに首を横に振る
私は再び膝に顔を埋めながら頷いた
私が言い淀んでいるとその場にトントンというノックの音が響いた
すると扉が開き、リィーシェが申し訳なさそうに顔を覗かせた
リィーシェは一瞬こちらをチラリと見る
契約内容に関するもの?
一体なんなのだろう
そう言って三人は地下室から出て行った
三人が出て行き、足音が遠ざかったところでリィーシェが私の名前を呼んだ
だけど私の言いたい事は決まっていた
そこまで言った時、リィーシェが私の台詞を遮り言った
分かっていたのだ
リィーシェは私が何を言いたいのか
私は別に倒れても良いと思った
だけど寝ないと心配されるから
だから私は睡眠薬を大量に摂取し、無理矢理にでも寝ようとしたのだ
リィーシェぎ話そうと口を開いた時、上の階から怒声が聞こえて来た
声で『カイ兄』だという事が分かった
リィーシェは微かに顔を顰めると再び話し始めた
あの事を話せば恐らく皆私の周りから離れていく
私はそれが怖いのだ
今のこの幸せの日々が終わってしまうのが
私は恐る恐る手を出す
リィーシェは私の手を取ると、とある魔法を発動させる
私はその魔法を見ながら心境を吐露していく
この大切な日常が崩れるのが怖いんだよ………………
リィーシェは私の手をそっと握るとそう言った
そう言った直後、睡魔が襲って来て私は意識を手放した
…………………………
話し声が聞こえて私は目を覚ます
話し声の一番最初に聞こえた台詞は
というものだった
カイ兄が居ない…………?
バツが悪そうにお兄ちゃんはそう言った
さっき怒声が聞こえたけれどそれが関係あるのだろうか
私は少し迷ったがすぐに決める
リィーシェが目を見開いたのが分かった
それ程に驚いているのだ
心配なのだ
きっと私のせいでカイ兄を傷つけてしまったのだろうから
『自分自身を責めるな』
最も私がやりそうな事をよく分かってるようで
でも、今は自分自身を責めてられない
私とラズ兄が死にかけた場所は私が覚えている限り二つ
そしてその内の一つは写真があった筈だ
私は記憶の奥底を探る
私は苦笑しながらも、行く場所は決めていた
写真のある、あの場所へと向かう事を
でも急いで行った方が良いよね
そう言ってリィーシェはとある服を投げ渡してくる
それは私が暗殺の時に着ていた服だった
しっかりと洗われて仕舞われていた筈のその服を何処からリィーシェは見つけ出したのだろう
その服は薄く魔力が纏わされていた
恐らくリィーシェが魔法を掛けたのだろう
何処かへと消えて行ってしまう一斗さん
私はリィーシェが渡してくれた服に瞬時に着替えると、そう言った
そう言ってお兄ちゃんは地下室へと降りて行った
そう呟いて私は駆け出した
………………………………………
(数分後)
方向音痴にも程があるとは思うけど、私の場合はその度を超えてるね!?
などと考えていると声が聞こえた
いい加減方向音痴を治したいよぉ………
送ってくれるのは正直凄く有難い
私はカイ兄を探しに行く前に紅魔館の自室に寄り、ある場所の写真を持って来ていた
私はその写真を國刻さんに手渡す
迷子になるんだよね……………
扇子で口元を覆いながらそう言う國刻さん
何を、言って………………
何で分かるのか不思議である
私は國刻さんに秘密を伝えてみた
そう言う國刻さんの言い方はとんでもないレベルの棒読みである
私は困惑した
凄く棒読みなのに驚きなんですけど…………
私はジワジワと目を見開く
國刻さんはそう言いながら扇子で口元を覆いながら、別方向へ行ってしまった
探していたカイ兄は店で団子を食べていた
まずどうやって話しかけるか考えてなかった
さてどうしようかな………………
するとカイ兄のアホ毛が動いた
見つかったらどうしよう…………
いきなり私の方を向いてくるカイ兄
私は驚き飛び下がってこける
手を差し伸べてくれるカイ兄
手を取りながら私はそう答える
私があの幸せの日々から離れたくないという思いだけで大切な事を言わなかったから、カイ兄を傷つけてしまった
手を繋いでそう言うカイ兄
転移空間を開いてカイ兄はそう言った
私は背伸びするとカイ兄の頭を撫でる
するとカイ兄はひょいっと私を抱き抱えた
そう言ってカイ兄は私に肩車をしてくれる
そんな会話をしながら私とカイ兄は帰路に着くのだった
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。