私と蓮兎は階段を上がっていた
蓮兎は歩く力がなかったから
私が支えていた
2人の足音が響く
私たちは時々休みながら階段を登った
きぃ…とドアが開く
彼は私の質問には答えない
屋上についた
私たちは早速フェンスをまたぐ
下を見ると
そこには大通りが広がっていた
そういう君の口調はいつものようにふわふわとしていて
不思議な雰囲気だった
ずっとずっと、死にたかった
だけど私は今、死を目の前にして恐れている
嗚呼、馬鹿馬鹿しい
母さん、ごめんね、
素直になれない娘でごめんね、
最後の最後まで自分勝手で、
貴方に甘えてばかりでごめんね
心の中で精一杯の謝罪を呟く
蓮兎の顔色は良かった
私は人生で初めて明るい声で喋った
私たちは飛び降りた
2人で手を繋いで飛び降りた
頭から飛び降りた
笑顔で飛び降りた
泣いて飛び降りた
何故私達は飛び降りたのか
そう
愛が欲しかったから
友達が欲しかったから
真実が欲しかったから
素直が欲しかったから
永遠が欲しかったから
私たちは死ぬ
"素直"を求めて
"真実"を求めて
"友達"を求めて
"愛"を求めて
"貴女"を求めて
"永遠"を求めて__。
end.
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。