俺は知らない病院に来ていた
今日からここに入院するらしい
有り難かった
親に見捨てられ住むところをなくしていたからだ
親に捨てられたのは俺の病気のせいだけど
この病気があったからここに入院することができた
急に姿を表した俺と同い年くらいの少女
芽依 と名乗った少女はにこっと笑った
その笑顔が魅力的だった
それから彼女と話すようになった
その時間が楽しかった
恋 をしていたわけではない
彼女に恋愛感情を抱いていたわけでもなかった
本当の妹のように接していた
だけど、ある日
「芽依ちゃん、亡くなったよ、」
俺の様子を見に来た看護師が言った
あまりにも唐突なことで俺は受け止めきれなかった
一昨日、幸せそうに笑ってたじゃないか
まだまだ生きるよ!なんて張り切ってたじゃないか
俺は何故か置いていかれた気分だった
「再会するの、ちょっと早すぎたかな?笑」
「早すぎだよ、笑」
next
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!