第62話

三ツ谷隆
4,527
2021/09/18 13:27

放課後になればみんな部活動へと足を運ぶ。
俺もそのうちの一人だ。

家庭科室の扉を開ける。
必ずいつも一番最初に来ている生徒に声を掛けた。
三ツ谷隆
おっ今日も早いね
あなた
部長が遅いんですよ
一つ下の学年のあなたの名字は、誰よりも早く部室へと行き準備をしてくれている。
正直助かっているのだが、こうして真っ先に教室から部室へ向かう自分より早く来て、準備をしてくれているのは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
三ツ谷隆
あなたの名字、いつも悪いな
大変だろ?
俺も手伝いながら問う。
辛いならたまには息抜きをすればいい。
後輩だからって理由で、責任を感じてやることではない。
みんなで分担すればいい話なのだ。

でも、彼女は笑いながらこう言った。
あなた
全然大変じゃありませんよ!
好きだからやってるんです
その表情は、本当に嫌がっているとかそんな風には見えなかった。
俺も釣られて笑ってしまう。
三ツ谷隆
そうか、それならいいんだけど
あなた
…早く来たら部長に会えるし
三ツ谷隆
ん?何か言ったか?
あなた
いいえ!なーんにも!
そろそろみんな来ると思うので、私作業始めますね
今、なんて言った?

俺の聞き間違いだろうか。

作業を始めているあなたの名字を見る。
特に変わったところはない。

考え事をしていると、続々と他の部員達がやって来ていた。
あっという間に賑やかになった部室で、隅の方で静かにミシンを動かしているあなたの名字をもう一度見る。

真剣だが、どこか楽しそうで。
あなた
早く来たら部長に会えるし
確かにそう言ったように聞こえた。
あの静けさだったら、聞き間違えることはないだろう。

誰にでも優しくて

友達思いで

勉強も

苦手な運動も一生懸命で

ちょっとからかえば顔を赤らめる

笑顔が可愛い子。

まさか自分が密かに想いを寄せていた人が、こんな形で両思いと判明するとは思わなかった。
部員に話しかけられて我に帰る。
いつも通り部活動の時間を過ごすが、頭の中はあなたの名字の事でいっぱいだった。



部活の終わりを告げるチャイムが鳴った。
一言声を掛けて、全員で片付けを始める。

片付け終わった人から部室を出て行く。
俺は最終チェックがあるから最後まで残る。

すると見慣れた姿が、まだ机に向かっている。
三ツ谷隆
…あなたの名字、みんなもう帰っちゃったぞ
あなた
…ぇ、あっ!ごめんない!夢中になってしまって
すぐ片付けますと、急いで机の物をしまっていく。
ミシンに手を伸ばしたところで、小さく悲鳴が聞こえた。

急いでいたせいか、針が指に軽く刺さってしまったようだ。
三ツ谷隆
大丈夫か?
待ってて、絆創膏持ってくるから
カバンの中から絆創膏を取り出す。
妹たち用に買っておいた、クマのやつしかないがしょうがない。
三ツ谷隆
ホラ、手出せ
貼ってやるから
あなた
…ごめんなさい
三ツ谷隆
謝んな
そこはありがとうございます、だろ
あなた
はい、ありがとうございます…
おずおずと怪我した手を差し出す。
そこまで深くはいっていないようで安心した。
ささっと絆創膏を貼る。

小さくて白い手。
ずっと触れたくて仕方がなかった。
でもその気持ちをグッと堪える。
三ツ谷隆
よし、できたぞ
あなた
…クマちゃん、可愛い
三ツ谷隆
妹用に買ったやつだからな
三ツ谷隆
…笑うなよ
あなた
ふふっ、ごめんなさい、可愛くて…
ありがとうございます
少し照れ臭かったが、あなたの名字にならいいと思った。
バカにするような言い方ではなくて、優しくて温かみのある言い方。

残りの片付けを終え、二人で部室を後にする。

外は日が沈み、暗くなっていた。
三ツ谷隆
送ってくよ
あなた
え!大丈夫ですよ!
早くお家帰ってあげてください
妹さんたち、待ってるはずですから
そう微笑んでから、別れの言葉を告げ反対方向に歩き出す。
俺は咄嗟に、その手を掴んでいた。

驚いた表情のあなたの名字の顔が映る。
三ツ谷隆
あなたが心配だから、一緒に帰りたいんだけど
三ツ谷隆
…好きな人危険な目に合わせたくないだろ
あなた
ぶ、部長が…私を…?
あなた
好き…?
三ツ谷隆
…何度も言わせるなよ
あなた
嬉しい…
私ずっと部長の事、好きだったんです…
ポロポロと涙を溢しながら、一生懸命言葉を繋ぐ。
そんな小さい身体を抱き締める。

少し落ち着いたあなたと手を繋ぎながら、たわいもない話をして歩く。
お互いまだ知らないことがたくさんある。

これからこうやって一緒に歩んで行けたら

幸せだろうな。











お待たせしました🙇‍♀️
リクエスト頂いていた三ツ谷です💗
いつもより長くなりました💦


三ツ谷のカバンからクマさんの絆創膏出てきたら可愛すぎて失神します😇

感想、リクエストお待ちしております💭💗

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