第9話

羽宮一虎
12,046
2021/07/15 14:06
あなた
暑い…
あなた
アイス、昨日食べちゃったんだよね…
暑さのあまり、アイスが食べたくなってコンビニへ行くことにする。

梅雨明けが発表され、もうすっかり夏だ。
夜の虫の声を聞きながらとぼとぼと歩く。

コンビニでお目当ての、ちょっと高めのアイスと棒付きのアイスを購入して、再び来た道を引き返す。

夏の夜の空気は嫌いじゃない。
もう少し散歩がしたくなって、通ってきた道より人気のない道へ進む。
我慢出来ずに棒付きのアイスに手を伸ばし、食べる。
あなた
うまぁ
アイスを頬張り、幸せな気持ちで歩いていると、近くの建物から何やら声が聞こえる。

言葉までは聞き取れないが、穏やかでは無さそうだ。
あなた
その前通らないと帰れないんだよなぁ…
ぼそっと呟いて、声のする方を見る。
2人の男が、うずくまっている人に向かって声を荒らげているようだった。

関わりたくない、そう思っているのに。

ちょっとだけ、そんな浅はかな感情が私の頭でいっぱいになる。

そして、


1人の男と目が合った。
やばいと思った瞬間、身体が動いた。

逃げなきゃ、
もぶ 1
おい!テメェ逃げんな!
あなた
ひぃ…!
たまたま通っただけなんです!
たまたま見ちゃっただけなんです!
…なんて一目散に逃げ出した今、通用するはずもないだろう。
捕まったらと思うと、想像するだけで恐ろしい。

このまま家に帰ることは出来ないので、何とか巻けないかと、ひたすら走り続ける。
私は頭の片隅で、高いアイスが溶けることを悲しみながら、そもそもアイスを食べたいと思った自分を呪った。

あなた
はぁ…はぁ…っ
元々体力がない私にとっては、少しのダッシュでさえ辛い。
でも、まだ2人は追ってくる。

転ばないように必死に走るが、もう限界だった。

あなた
痛っ…
足がもつれて転んでしまう。

終わった。

すぐそこまで男たちが来ている。
足も痛いし、アイスは溶けるし、最悪だ。
もぶ 2
クソっ…手こずらせやがって
もぶ 1
おい、コイツ悪くねぇ顔してるぞ
そう言って無理矢理立たせられる。
こっちに来いと言わんばかりに、すぐそこにあった公園へ引っ張られた。

抵抗する体力は、もうなかった。


公園内に入り、トイレの方まで歩かさせる。
すると、正面から人が歩いてくるのが見えた。

そして、
もぶ 1
ガッ…
もぶ 2
ぐふっ…
鈍い音と共に、
私の視界から男達が消えた。

地面に目をやると、気絶した2人が倒れている。

何が起こったのか分からないまま、
正面の人影を見る。

ふわりと風が吹いて、リンと音が鳴る。
羽宮一虎
月明かりに照らされる綺麗な少年だった。

この人が、助けてくれたの?
羽宮一虎
…来て


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