暑さのあまり、アイスが食べたくなってコンビニへ行くことにする。
梅雨明けが発表され、もうすっかり夏だ。
夜の虫の声を聞きながらとぼとぼと歩く。
コンビニでお目当ての、ちょっと高めのアイスと棒付きのアイスを購入して、再び来た道を引き返す。
夏の夜の空気は嫌いじゃない。
もう少し散歩がしたくなって、通ってきた道より人気のない道へ進む。
我慢出来ずに棒付きのアイスに手を伸ばし、食べる。
アイスを頬張り、幸せな気持ちで歩いていると、近くの建物から何やら声が聞こえる。
言葉までは聞き取れないが、穏やかでは無さそうだ。
ぼそっと呟いて、声のする方を見る。
2人の男が、うずくまっている人に向かって声を荒らげているようだった。
関わりたくない、そう思っているのに。
ちょっとだけ、そんな浅はかな感情が私の頭でいっぱいになる。
そして、
1人の男と目が合った。
やばいと思った瞬間、身体が動いた。
逃げなきゃ、
たまたま通っただけなんです!
たまたま見ちゃっただけなんです!
…なんて一目散に逃げ出した今、通用するはずもないだろう。
捕まったらと思うと、想像するだけで恐ろしい。
このまま家に帰ることは出来ないので、何とか巻けないかと、ひたすら走り続ける。
私は頭の片隅で、高いアイスが溶けることを悲しみながら、そもそもアイスを食べたいと思った自分を呪った。
元々体力がない私にとっては、少しのダッシュでさえ辛い。
でも、まだ2人は追ってくる。
転ばないように必死に走るが、もう限界だった。
足がもつれて転んでしまう。
終わった。
すぐそこまで男たちが来ている。
足も痛いし、アイスは溶けるし、最悪だ。
そう言って無理矢理立たせられる。
こっちに来いと言わんばかりに、すぐそこにあった公園へ引っ張られた。
抵抗する体力は、もうなかった。
公園内に入り、トイレの方まで歩かさせる。
すると、正面から人が歩いてくるのが見えた。
そして、
鈍い音と共に、
私の視界から男達が消えた。
地面に目をやると、気絶した2人が倒れている。
何が起こったのか分からないまま、
正面の人影を見る。
ふわりと風が吹いて、リンと音が鳴る。
月明かりに照らされる綺麗な少年だった。
この人が、助けてくれたの?
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。