血のハロウィン。
私の大好きな人が死んでしまった。
小さい頃からずっと一緒だったのに。
彼の背中を追いかけて、
彼のように友達思いで、
彼のように強くなりたいと思っていたのに。
私の、生きる目標を失ってしまった。
数日家に引きこもり、外に出ない日々。
途方に暮れ、何度も死のうと思った。
でもいざその時になると怖くて。
きっと彼も怖かったはずなのに。
私は弱い。
だから変わらないといけない。
ポンッと圭介が背中を押してくれた気がした。
何日か振りに外の空気を吸う。
そして目的地まで止まることなく歩く。
目指していた場所には先客がいた。
金髪の髪が揺れている。
松野千冬。
圭介とよく一緒にいて私も仲良くなった。
当然、会うのは久々だ。
墓石の前に座り、そこには半分のペヤングが置いてある。
圭介に、話しかけているようだ。
邪魔しては悪いと思い影から見守る。
そして涙を流す所を目撃してしまう。
言葉を掛けられなかった。
胸が締め付けられて、自分まで泣いてしまいそうだった。
でも自然と身体が動いていた。
彼を、千冬くんを抱き締める。
きっといきなり抱き締められたから驚いているに違いない。
少し申し訳ないと思いながらも、泣いている彼を放ってはおけなかった。
気が付いたら私も涙が零れていた。
声を押し殺す。
すると後ろから足音が聞こえる。
マイキーが立っていた。
2人で彼を見上げる。
何かを決心した表情だった。
あれから1ヶ月程経った。
私と千冬くんはお互いを支え合っていた。
もちろん、大好きな人がいなくなった悲しみは癒える事はない。
でも2人で居れば、多少は紛らわす事が出来た。
というのも、私だけかもしれない。
いつまでも過去に囚われているのは。
千冬くんは強い。
しっかり前を見ているのに。
それに比べて私は…
考え事をしていたせいか、ぼーっとしたまま歩いていた。
心配してくれた千冬くんが顔を覗き込む。
あははと笑って誤魔化す。
千冬くんは鋭い所があるから、心配掛けないようにしないと。
一瞬思い詰めたような顔をしたが、いつもの笑顔に戻る。
多分彼は気付いているだろう。
私の考えている事を。
でも気付かないフリをしてくれている。
本当に優しくていい子だ。
そんな彼を、好きになってしまいそうだった。
心を殺す。
彼は友達だと呪いのように唱え続ける。
半人前にもなっていない私が、恋愛をする資格なんて無いのだから。
もうすっかり冬になり、寒さで指先が悴んでいた。
息を吐き温めるが、一向に温まらない。
カイロでも持ってくるんだったと後悔していると、隣で歩いていた彼は、私の手を握る。
びっくりして千冬くんを見るが、彼は笑っている。
握られた手を、そのまま自分のポケットに突っ込む。
さっきまで手を入れていたようで温かい。
必然と近くなった距離に、心臓がうるさく鳴る。
隣に居る彼に聞こえてしまいそうで少し怖かった。
家までの帰り道、歩幅を合わせる。
いつも通っている道なのに、何だか遠く感じた。
私と千冬くんの家は同じ団地の階違い。
道のりは一緒だ。
建物の入り口辺りまで歩くと、千冬くんは歩みを止めた。
どうしたのか心配になり、顔を覗き込む。
付き合って欲しいと、今まで見たことのない、真剣な表情だった。
ポケットの中で繋がれた手に力が入る。
嘘じゃない事は、バカな私でもわかった。
ついこの間、大好きな人を亡くしたのに。
私は幸せになっていいのだろうか。
好きと言う気持ちを殺して、彼に接するのをやめていいのだろうか。
当たりだ。
何だか圭介に申し訳ない気がした。
きっとやりたいことだっていっぱいあったはずなのに。
死んでしまった人に答えは聞けない。
でも圭介なら笑って許してくれる気がした。
そう、言ってる気がした。
ただの自己満足かもしれない。
それでも、私は誰かに背中を押して貰いたかっただけなのかもしれない。
前を向くために。
何かきっかけが欲しかったのだろう。
千冬くんは嬉しそうに微笑む。
繋いだ手を口元へ持っていき、私の手の甲に軽く口付けをした。
照れ臭くてまともに顔が見れない。
そんな2人で笑い合う。
久しぶりに心から笑顔になれた日だった。
長くなりました💦
リクエスト頂いた千冬のお話🙌
切ない、甘い、ハピエンちゃんとご希望の要素入ってましたでしょうか💦
ちょっと無理やり詰め込んだ部分があり、申し訳ないです🥲
皆様良かったら感想、リクエスト待ってます💭
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。