――――風が涼しい秋晴れの午後、あなたは家族と先祖代々受け継がれる墓へと足を運んだ。
…いつもなら来ないのだが、今年に限って行く気になった。
―――「竈門家」と書かれた墓の前。
父は蝋燭と線香点け、母はお供え物に菊の花を生けている。
「竈門」の名字は珍しく、あなたは少し気に入っていた。
幼い頃、祖母に曾祖父の話を聞いたことがあるが、今ではうろ覚え。もう一度聞こうとしても、耳が遠い祖母では話にならず、訊ねることさえ断念していた。
鬼に似た熊だとか狼を退治したのかな…と、あなたは勝手に解釈していた。
あなたは手を合わせ拝みながら、そんなこと考えていた。
母は、墓に呟く。
墓を背に帰ろうとしたとき、あなたは妙な違和感を覚える。
全身の毛穴が逆立つような、そわそわした感覚…
父と母に置いて行かれそうになり、あなたは慌てて駆け出す
何歩か小走りした所で、石に躓いた
その時、あなたの周りに次元のような空間が開き、一瞬にして辺りが一変する
―――――ドタッ!!
あなたは目の前を見て思考が停止した。さっきまで自分が居た場所は墓地。
……今、目の前に見えるのは、近くに山があって、周りが野原になっている。
そして、両親の姿が見えない。
後ろを振り向くも、野原が続くだけ。
パニックになり、あなたは走り出した
――――体力の続く限り走ったが、一向に知ってる風景、先ほど車窓からみた景色は現れない。
体力も限界に来て、辺りは日が傾き、夜が駆け足で迫ってくる。
道なき道を歩いていたとき、前方に人影を見つけ、"救いの神!"と近づき、その影に話しかける
鬼は腹を空かしていたのか、あなた目掛けて素早く駆けつけてくる
腰を抜かしたあなたは、尻餅をつきその場を動けなかった
もう終わりだと思い、あなたは眼を閉じる
頚を切られた鬼は、その場に倒れ、灰になる
そうとも知らず、あなたは未だに丸くなり、ガタガタ震えている
あなたは恐る恐る顔を上げる。
額に傷がある少年があなたを心配そうに見下ろしている。
―――バタッ!
あなたは、疲れとパニックから気絶して倒れる。
―――あなたは夢を見た。
祖母に曾祖父の話を聞いている自分が居る。
「お前の曾祖父さんはね、悪い鬼を倒す、それはそれは強い人だったんじゃよ」
「―――大好物はタラの芽じゃったな」
「今の平和な世があるのは、曾祖父さんのお陰かもしれん…」
――――to be continued.
――――――――――――――
自分がタイムスリップしたみたいで、書いてて新鮮でした!
でも、もう少し臨場感が欲しいな……ι
臨場感……ありましたか?…ないよね~ι
さてさて、次は皆出てきます!
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。