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その後、天はさりげなくうちで泊まり、そそくさと帰っていった。
騒動がおさまってきたところで、私達はまともに仕事を再開することができた。
ただ、TRIGGERさんと一緒の仕事は減っていた。
折角天と恋人同士になれたのに、会う機会がすっかり少なくなっていた。
連絡のやりとりはしているんだけど、やっぱり会いたい。
、、、私、て、いつのまにかこんなに天のこと大好きになっていたんだな。
「あ、あなたちゃん。」
スタジオの廊下で話しかけられたのは小川まゆちゃん。
う、きまずい。
「ま、まゆちゃん久しぶり。
あ、の。」
「九条くんのこと?
大丈夫だよ!私もう諦めたし!!
幸せになってね。」
まゆちゃんはかわいい笑顔で言った。
「っ、ありがとう!」
ほんと、まゆちゃんいい子。
この時の私は、まゆちゃんの笑顔の裏に隠されたことに気が付かなかった。
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「なんで、こんなこと、、、」
『 女優 條森あなた 浮気か?!
俳優の○○とのデート姿を目撃。』
「っ、違う、これ私じゃない、、、
天、助けて、、、」
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【 天side 】
あなたに会えない日々が続いていた。
事務所同士でも共演させないようにしてるみたいだし、ほんと呆れる。
歌番組の収録がおわり、楽と龍と楽屋へもどるとき、
「九条さん!」
と、聞いたことのある声が聞こえた。
振り返ると、映画が終わったあと告ってきた小川まゆ。
ボクはすぐに作り笑顔をはっつけて
「楽たちは先いってて。
で、なんのよう?」
と言った。
小川さんは、楽たちがいなくなったのを確認して、携帯をとりだした。
「九条さん、あなたちゃんのニュース、見ました?あれ酷いですよね。」
、、、ニュース?
「ボクたちのニュースなら、もうとっくに、、、」
小川さんが差し出した携帯の画面をみてみると、あなたと知らない俳優の熱愛報道の記事が書かれていた。
、、、は?
「なにこれ。」
「ほんと、あなたちゃんてひどいですよねー。
九条くんに会えないからって、他の男に手を出すなんて。
九条くん裏切られたんだよ。」
ボクは写真をこっそり消して、小川さんに返す。
「これ、あなたじゃないよ。
これあなたの髪型した小川さんでしょ。
ボクを騙したいならもっとうまくやったほうがいいよ。」
ちょっと低めの声で言うと、小川さんは「えっ、、」と声をもらした。
「っでも。」
「わかってないようだから言うけど。」
ボクは小川さんを見下ろすようにみる。
「あなたが想っている男はボクだけだし
ボクが想っている女もあなただけだから。」
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。