第19話

19話 運命と向き合って
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2019/12/17 04:09
宮内 芳
宮内 芳
なんでここに……
派手な女の子
派手な女の子
芳の彼女?
驚いてる芳くんの周りにいる女の子たちが
睨みつけてくる。
宮内 芳
宮内 芳
いや、知らない女だよ
それを聞いたガラの悪い男の子たちが
にやにやしながら、私の肩を抱いてきた。
清水 透
清水 透
あなた! お前たち、離れろ!
透が私に近づこうとするも、
女の子たちに囲まれて身動きがとれずにいる。

たぶん、力任せに振り払えば、
彼女たちが怪我をすると思ったんだろう。
ガラの悪い男の子
ガラの悪い男の子
地味だけど、俺、
こういう素朴で純情そうな子が
タイプなんだよね
あなた

……っ、いや

男の子に顎を掴まれて、ぞわっと鳥肌が立つ。

その瞬間、腰に腕が回って、
私に触れていた男の子の手の感触が消えた。
宮内 芳
宮内 芳
あなたに触んな! この女は俺のだ!
怒鳴り声とともに、
私は芳くんに抱き寄せられる。

興が冷めたのか、男の子たちが去っていくと、
芳くんは私からぱっと手を離した。
宮内 芳
宮内 芳
じゃあね
素っ気なくそう言い放って、
芳くんはいなくなろうとした。

けれども私は、芳くんの手を掴んで引き止める。
あなた

どうして、こんなところにいるの? 
お母さんのそばにいなきゃ!

宮内 芳
宮内 芳
一時は危篤だったけど、
今は持ち直したから、
もう俺がそばにいる必要ないだろ。
ガンだからさ、遅かれ早かれ死ぬだろうけど、俺には関係ない
あなた

……人は死んだら、どんなに会いたくても、
どこを捜しても、月に行ったって
会えないんだよ。
私はお母さんが亡くなったとき、
何度も何度もこうしてれば、
ああしてればって考えてばっかりで……
苦しかった

関係ないと言いながら、
私が掴んでいる芳くんの手は震えている。
あなた

芳くん、許せないことがこれまでに
たくさんあったと思う。
それでも、今はそばにいる時間を大事に
してほしい。
お母さんとしたかったことをして、
お母さんに言えなかった言葉を伝えて?

宮内 芳
宮内 芳
あなた……あなたはさ、
俺に酷いこと言われたのに、
なんで優しくしてくれんの?
あなた

私は芳くんの帰る場所だから、
なんでも受け入れてあげたいって思うの。
ただ、それだけだよ

宮内 芳
宮内 芳
あなた……
芳くんはようやくふっと息を吐いて、
ぎこちなく笑った。
清水 透
清水 透
これで、もう大丈夫だな。
俺はそろそろ帰るよ
そう言って去っていく透の背中に
私が「ありがとう」と声をかけると、
軽く手を挙げて応えてくれた。

その場に残された私たちは、
向き合うようにして立つ。
宮内 芳
宮内 芳
俺、これから母さんのところに
行こうと思う。あなた、よければ……
あなた

うん、ついていくよ

宮内 芳
宮内 芳
全部言わなくても、
あなたにはお見通しなんだな。
ありがとな
私の頭を軽く撫でて、
芳くんは手を繋ぎ直してくる。


ひとりじゃないよ……。


そんな思いを込めて手を握り返せば、
芳くんは小さく微笑んだ。

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