第13話

男と女に戻ったら
7,860
2021/10/30 04:00
バスケ部員2
修斗、お前どこ行ってたんだよ
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
ごめん、トイレ
バスケ部員1
もうバス来るってさ。はー、悔しいな
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
そうだな、また頑張ろう
皆の元に戻ってきた修斗くんは、すっかりいつも通りだった。
ニコニコと笑っていて、マイナスな言葉なんか吐かない、ムードメーカー。
一宮 みこ
一宮 みこ
修斗くん、お疲れ様
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
みこ先輩
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
ごめんなさい、負けました
その笑顔の下には、きっと違うものを隠している。
一宮 みこ
一宮 みこ
ちょっと、あっちいこ
修斗くんを少し離れたところに連れ出す。

自販機で買ったばかりのドリンクを渡した。
一宮 みこ
一宮 みこ
はい。これ、好きだったでしょ
一宮 みこ
一宮 みこ
修斗くんにだけ、特別
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
うわ、みこ先輩が優しい
一宮 みこ
一宮 みこ
私はいつも優しいよ
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
はは
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
かっこわるいところ見せちゃいましたね
一宮 みこ
一宮 みこ
ん?
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
見てたんでしょ、さっき
一宮 みこ
一宮 みこ
(バレてた……)
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
みこ先輩、気配が分かりやすいから
一宮 みこ
一宮 みこ
(忍者か)
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
てか、今までの盗み見も知ってたし
一宮 みこ
一宮 みこ
(やっぱり忍者だ)
一宮 みこ
一宮 みこ
ごめんね、黙ってて……
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
いいですよ。いつも心配して探してくれたの、知ってるし
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
自分からみこ先輩を誘った今日くらいは、勝ちたかったな
一宮 みこ
一宮 みこ
修斗くん……
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
あと、みこ先輩の声、一番うるさかった
せっかく、めずらしくしおらしくなったと思ったのに、早くもこれだ。
一宮 みこ
一宮 みこ
次もしっかりとうるさく応援するから、また頑張ってね
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
はい
そしてまた、水曜日になった。
学校から帰り、制服を着替えて、リビングで待機する。
普段なら、だらんとソファーに体を預けるところを、今日はシャキッと背筋を伸ばして座っている。
雅志先輩とは、カフェで会って以来になる。
一宮 みこ
一宮 みこ
(先週までとは比べものにならないくらい、緊張する……!)
三笠 雅志
三笠 雅志
こんにちは
ママ
先生、今日もよろしくお願いします
一宮 みこ
一宮 みこ
ママ
みこ、先生いらっしゃったわよ
玄関で交わされるやり取りが聞こえてきて、反射的に立ち上がる。
リビングを出て、雅志先輩を迎えに行く。
一宮 みこ
一宮 みこ
こ、こんにちは……
三笠 雅志
三笠 雅志
こんにちは。今日も頑張ろうね
雅志先輩は、いたって平常心。
一宮 みこ
一宮 みこ
(また私だけ、ドキドキしてる……)
部屋に入って、勉強机に筆記用具を並べる。
一宮 みこ
一宮 みこ
これ、先週のプリントです
三笠 雅志
三笠 雅志
待ってね、今答え合わせするから
静寂の中で、ペンを走らせる音だけが聞こえる。
三笠 雅志
三笠 雅志
……うん、よく出来てる。頑張ったね
一宮 みこ
一宮 みこ
あ、よかったです……
三笠 雅志
三笠 雅志
ただ、ここの公式。これでも間違いじゃないんだけど、回りくどくなるっていうか……、こうした方が簡単だし、時間も短縮できるかな
一宮 みこ
一宮 みこ
席に着いた私のすぐそばで、雅志先輩は身を寄せるように、勉強机の上のプリントに手を伸ばした。
一宮 みこ
一宮 みこ
ち、近い……!
三笠 雅志
三笠 雅志
でも、ここは先週教えた通りだね。ちゃんと身についてる
一宮 みこ
一宮 みこ
そ、そうですか……
ガチガチに緊張している私を見て、雅志先輩は苦笑いをした。
三笠 雅志
三笠 雅志
……休憩の時に、話がしたいんだけどいいかな?
一宮 みこ
一宮 みこ
え?
三笠 雅志
三笠 雅志
授業中は、先生と生徒だから
三笠 雅志
三笠 雅志
ただの男と女に戻ったら、話をしよう

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