皆の元に戻ってきた修斗くんは、すっかりいつも通りだった。
ニコニコと笑っていて、マイナスな言葉なんか吐かない、ムードメーカー。
その笑顔の下には、きっと違うものを隠している。
修斗くんを少し離れたところに連れ出す。
自販機で買ったばかりのドリンクを渡した。
せっかく、めずらしくしおらしくなったと思ったのに、早くもこれだ。
*
そしてまた、水曜日になった。
学校から帰り、制服を着替えて、リビングで待機する。
普段なら、だらんとソファーに体を預けるところを、今日はシャキッと背筋を伸ばして座っている。
雅志先輩とは、カフェで会って以来になる。
玄関で交わされるやり取りが聞こえてきて、反射的に立ち上がる。
リビングを出て、雅志先輩を迎えに行く。
雅志先輩は、いたって平常心。
*
部屋に入って、勉強机に筆記用具を並べる。
静寂の中で、ペンを走らせる音だけが聞こえる。
席に着いた私のすぐそばで、雅志先輩は身を寄せるように、勉強机の上のプリントに手を伸ばした。
ガチガチに緊張している私を見て、雅志先輩は苦笑いをした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。