久しぶりに、声を聞いた。
再会としては、最悪のタイミングだったけれど。
修斗くんは、私と雅志先輩、そしてひとつだけの傘を見て、一瞬で状況を理解しただろう。
ふたりは、ひとり一本の傘をさしている。
その事実に、無意識に安堵をした自分がいた。
一部始終を聞いていた修斗くんの表情が、傘に隠れる。
名前を呼んでも、修斗くんは振り向きもしない。
バッグの中で、お守りがチリンと小さく鳴いた。
*
それから、あっという間に時が過ぎていった。
学校の授業時間の他に、休み時間にまで机に向かう私を見て、真白が感心したようにため息をつく。
年も変わり、外では雪がちらつくようになって、
一週間後には、私たち三年生は自由登校が始まる。
こうなると、定められた登校日以外は、学校にも行くことはなくなる。
余計なことは何も考えたくなくて、頭の中を空っぽにして、勉強を詰め込んでいるだけ。
真白が、私のペンポーチの小さなお守りを指差す。
修斗くんがくれたお守りは、私が自分で買ったものより、鈴が大きい。
指で触りながら、チリンと鳴らす。
あの日、拒絶するように向けられた背中が、修斗くんの答えのような気がして、今でも会いにいけない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。