第25話

四角関係?
5,461
2022/01/22 04:00
一宮 みこ
一宮 みこ
修斗くん……?
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
みこ先輩
久しぶりに、声を聞いた。
再会としては、最悪のタイミングだったけれど。
修斗くんは、私と雅志先輩、そしてひとつだけの傘を見て、一瞬で状況を理解しただろう。
バスケ部マネージャー
みこ先輩、お久しぶりです。試合を見に来て下さって、ありがとうございました
一宮 みこ
一宮 みこ
あ、う、うん……
一宮 みこ
一宮 みこ
(なんでマネージャーとふたりで?)
ふたりは、ひとり一本の傘をさしている。
その事実に、無意識に安堵あんどをした自分がいた。
バスケ部マネージャー
あの……、お隣の方は、三笠先輩ですか?
三笠 雅志
三笠 雅志
うん。久しぶり。僕が三年の時に入ってきた、一年生のマネージャーだったよね? あまり喋ったことなかったけど
バスケ部マネージャー
あっ、やっぱり……! 大人っぽくなってたので、気づきませんでした
バスケ部マネージャー
今も、みこ先輩とお付き合いされてたんですね。ふたり、お似合いでしたもん
一宮 みこ
一宮 みこ
ち、違うよ、私たちは
三笠 雅志
三笠 雅志
違うよ。僕は、みこにフラれたからね
一宮 みこ
一宮 みこ
先輩
バスケ部マネージャー
えっ、あ、そ、そうなんですね。すみません、余計なことを聞いてしまって
三笠 雅志
三笠 雅志
でも、諦めが悪くてさ。今は、また頑張って、好きになってもらおうとしてるところなんだ
バスケ部マネージャー
うわぁ……! それは素敵ですね!
一部始終を聞いていた修斗くんの表情が、傘に隠れる。
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
行こう。俺たち、きっと邪魔だから
バスケ部マネージャー
あっ、うん、そうだね。それじゃ、失礼します
一宮 みこ
一宮 みこ
修斗くん……!
名前を呼んでも、修斗くんは振り向きもしない。
バッグの中で、お守りがチリンと小さく鳴いた。
それから、あっという間に時が過ぎていった。
真白
最近、あんたいつも勉強してるね
学校の授業時間の他に、休み時間にまで机に向かう私を見て、真白が感心したようにため息をつく。
一宮 みこ
一宮 みこ
うん。受験まで、そんなに時間残ってないからさ
年も変わり、外では雪がちらつくようになって、
一週間後には、私たち三年生は自由登校が始まる。
こうなると、定められた登校日以外は、学校にも行くことはなくなる。
一宮 みこ
一宮 みこ
真白の方は、勉強大丈夫なの?
真白
聞かないでよ……。現実に戻されるじゃん……
一宮 みこ
一宮 みこ
(なるほど、逃避中)
一宮 みこ
一宮 みこ
(私だって、勉強に逃げているみたいなものだけど)
余計なことは何も考えたくなくて、頭の中を空っぽにして、勉強を詰め込んでいるだけ。
真白
あれ? みこって、学業のお守り、二個も持ってんだね
真白が、私のペンポーチの小さなお守りを指差す。
一宮 みこ
一宮 みこ
うん。こっちは、自分で買ったの。もうひとつは、修斗くんがくれて……
修斗くんがくれたお守りは、私が自分で買ったものより、鈴が大きい。
指で触りながら、チリンと鳴らす。
一宮 みこ
一宮 みこ
なんか……、この鈴の音、聞いてると落ち着くんだよね
真白
……五十嵐くん、最近来ないもんね
一宮 みこ
一宮 みこ
うん……
真白
寂しいね
一宮 みこ
一宮 みこ
うん、会いたいな
一宮 みこ
一宮 みこ
(でも……)
一宮 みこ
一宮 みこ
(あの子と付き合ってるのかな)
一宮 みこ
一宮 みこ
(……聞けない)
あの日、拒絶するように向けられた背中が、修斗くんの答えのような気がして、今でも会いにいけない。

プリ小説オーディオドラマ