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2021/09/25

第8話

三人の夜
雅志先輩と夜道を歩くだなんて、気まずさで何も話せないかと思ったけれど、意外と大丈夫だった。
会話の内容は、大学受験のことや、勉強のこと。
一宮 みこ
一宮 みこ
(“先輩”じゃなく、“先生”だと思えば、少しは平気かも)
無意識なのか、意識的なのか、お互いに過去の話はしない。
一宮 みこ
一宮 みこ
(まだこれから授業の日があるのに、わざわざ嫌な話をする必要ないもんね)
三笠 雅志
三笠 雅志
そういえば、みこってどこまで行くの?
一宮 みこ
一宮 みこ
えーと……
私たちが歩いているのは、通学路。
一宮 みこ
一宮 みこ
(上手くタイミングが合えば、この辺で……)
一宮 みこ
一宮 みこ
あっ、いた!
一宮 みこ
一宮 みこ
修斗くん!
三笠 雅志
三笠 雅志
は?
暗い中、視線の先に部活帰りの修斗くんを見つけて、駆け出す。
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
えっ、みこ先輩?
一宮 みこ
一宮 みこ
お疲れ様。ちょうどいいタイミングだったね
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
授業は?
一宮 みこ
一宮 みこ
今終わったの。時間見たら、修斗くん帰ってるあたりかなって思って
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
めっちゃアイス食いたかったんですね
一宮 みこ
一宮 みこ
あれ、バレてる?
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
みこ先輩が、わざわざ俺に会いに来るわけないし
一宮 みこ
一宮 みこ
そんなことないよ
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
じゃあ、アイス行かなくていい?
一宮 みこ
一宮 みこ
ええ!? よくない!
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
ほらー!
三笠 雅志
三笠 雅志
久しぶり、五十嵐
私と修斗くんがはしゃいでいると、ゆっくりと後ろから歩いてきた雅志先輩が、私たちの間に割って入った。
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
雅志先輩……も、いたんですか
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
俺のことなんか、覚えててくれたんですね
三笠 雅志
三笠 雅志
もちろん。お前は、一年の時から、飛び抜けて上手かったからな
一宮 みこ
一宮 みこ
そうですよ。修斗くんは、今じゃあバスケ部のエースですから
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
なんでみこ先輩が威張いばってるんですか
一宮 みこ
一宮 みこ
一番仲のいい後輩の自慢くらい、したっていいでしょ
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
アリガトウゴザイマスー
一宮 みこ
一宮 みこ
感情こもってないし
三笠 雅志
三笠 雅志
本当に、お前たちは仲がいいよな
「ははは」と乾いた笑い声のあと、雅志先輩は困ったように目を細めた。
三笠 雅志
三笠 雅志
いつもこうやって遊んでるんだ?
三笠 雅志
三笠 雅志
こんなこと言いたくないけど、みこには、受験生の自覚がちょっと足りないんじゃないかな
三笠 雅志
三笠 雅志
授業中も、たまに余計なこと考えてるみたいだし
一宮 みこ
一宮 みこ
あ、ご、ごめんなさい……
雅志先輩の言う「余計なこと」は、あなたのことを考えていたせいだったんだけど。
一宮 みこ
一宮 みこ
(確かに、余計なこと……だ)
返す言葉もなく、黙ってしまう。

横にいた修斗くんが、盾になるように私の前に手を出した。
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
家庭教師っていうのは、生徒の私生活にまで口出しするものなんですか?
一宮 みこ
一宮 みこ
修斗くん……
三笠 雅志
三笠 雅志
……そうだな。確かに、口出し過ぎた。ごめん
三笠 雅志
三笠 雅志
じゃあ、みこ、また来週
一宮 みこ
一宮 みこ
は、はい
雅志先輩は、私たちの横をすり抜けて、去っていった。
一宮 みこ
一宮 みこ
修斗くん
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
ごめんなさい、俺
一宮 みこ
一宮 みこ
ありがとう
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
……え?
一宮 みこ
一宮 みこ
かばってくれたんだよね
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
別に、そういうのじゃないです
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
ちょっとムカついただけ
一宮 みこ
一宮 みこ
それって、私のためでしょ
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
うぬぼれんな、みこ先輩のくせに
一宮 みこ
一宮 みこ
素直に認めればいいじゃん、可愛くないな
修斗くんと笑い合って、入ったお店で食べたアイスは、すごく甘かった。
その日の夜、雅志先輩からスマホにメッセージが届いた。
『今日はごめん』と、ひと言だけ。
一宮 みこ
一宮 みこ
(私の連絡先、消してなかったんだ)
その事実だけで、胸がギュッと縮むような感覚に襲われた。