第17話

合格祈願デート②
6,838
2021/11/27 04:00
雅志先輩とふたりきりで出かけることを考えたら、よく眠れなかった。
一宮 みこ
一宮 みこ
(付き合ってる時ですら、一回しか一緒に出かけたことないもんな……)
初デートは、本当にひどかった。
服装に悩みすぎて、眠れなくて、結果遅刻して。
雅志先輩は、笑って許してくれたけど、そのせいで、観る予定だった映画の時間に間に合わなかった。
次の回で、無事に観ることは出来たけど、眠っていなかったツケがここに回ってきてしまい、
半分ほど観た時点で、爆睡。

しかも、雅志先輩に起こされるまで目覚めなかった。
一宮 みこ
一宮 みこ
(……思い出したくなかった)
一宮 みこ
一宮 みこ
(若干、黒歴史)
雅志先輩は、ずっと笑って許してくれたけれど。
一宮 みこ
一宮 みこ
(あのデート、楽しくなかっただろうな)
最初で最後だったデートには、いい思い出がない。

それは、お互いに。
一宮 みこ
一宮 みこ
(あれが最後になるなんて、思わなかったし……)
今回は、先生と生徒として出かけるだけだから、あれほどの緊張感はない。
一宮 みこ
一宮 みこ
(あれ? 修斗くんの用事って、何だったんだろう?)
一宮 みこ
一宮 みこ
(明日、学校でも済むようなものなら、別にいいんだけど……)
一宮 みこ
一宮 みこ
(バスケ部の皆をまぜて遊んだことはあるけど、修斗くんと個人的に出かけたことってないし、それも楽しそうだな)
ハッと気づき、首を振る。
一宮 みこ
一宮 みこ
(私は、受験生。遊びに行く時間なんて、ないはずでしょ)
支度をして、玄関を出る。
雅志先輩がむかえに行くと言ってくれたから、ここで待機。
一宮 みこ
一宮 みこ
(駅で待ち合わせじゃなくて、家からってことは、徒歩圏内の神社なのかな)
ここから徒歩圏内にある神社だと、ひとつしかない。

毎年、正月の初詣は、そこに行くことにしている。
一宮 みこ
一宮 みこ
(学業成就に強いとか、聞いたことないような気がするけど……)
一宮 みこ
一宮 みこ
(効き目があるなら、どこでもありがたいな)
一宮 みこ
一宮 みこ
(私のことだから、切羽詰まって、最後には神頼みになるだろうし……)
今日は寒い。
ぶるっと震えて、マフラーを巻き直して、ムートンコートの襟を肌に寄せた。
スマホで時間を見る。
五分前。
一宮 みこ
一宮 みこ
(別に、外に出て待たなくて良かったかも)
一宮 みこ
一宮 みこ
(先輩の姿も見えないし)
そう思い、家に戻ろうとした時、一台のスポーツカーが、目の前でまった。
一宮 みこ
一宮 みこ
(……ん?)
車の窓が、ゆっくりと開く。
三笠 雅志
三笠 雅志
ごめん、家の中で待っててって、言うべきだったね
三笠 雅志
三笠 雅志
寒いでしょ? 早く乗って
これ以上開かないほどに、目を見開く。
車の中から顔をのぞかせたのは、雅志先輩だった。
一宮 みこ
一宮 みこ
えっ!? 雅志先輩、く、車!?
三笠 雅志
三笠 雅志
うん。駅にも近いんだけど、こっちの方が楽出来て、いいかと思って
三笠 雅志
三笠 雅志
この車自体は、親のなんだけどさ
車で来るのは少しも想定していなくて、驚いたまま助手席に乗り込んだ。

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