そして、あっという間に一週間が経って、また水曜日がやってきた。
放課後になり、部活に行く前の修斗くんが、いつも通りに三年生の教室に訪ねてきた。
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修斗くんとの雑談のあと、すぐに家に帰る。
雅志先輩は、まだ来ていない。
制服を着替えて、机に筆記用具を準備する。
階段の下からママに呼ばれ、二階にある自室から、慌ててかけ下りる。
雅志先輩が、靴を脱いで家の中に上がるところだった。
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雅志先輩は、先週見た私の得意なところと苦手なところを分析して、新しいプリントを作ってきてくれた。
教え方が上手くて、授業も分かりやすい。
問題がとけると、すごく褒めてくれる。
顔がいいのもそうだけど、こういうところも、生徒になった女の子が好きになってしまうのだろう。
雅志先輩は、ずっと冷静な顔。
少し上の空でいたら、消しゴムを机の下に落としてしまった。
手を伸ばすと、同時に大きな手が同じ場所に伸びてきた。
パッと手を引いて、うつむく。
こんなことくらいで、ひとりだけ顔を赤くする自分が恥ずかしい。
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授業が終わり、時間を確認する。
雅志先輩が外に出ようとする後ろを、追いかけるように靴を履く。
玄関の扉を閉める。
雅志先輩が、驚いたようにこちらを見た。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。