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第28話

未来まで、君と
6,715
2022/02/12 04:00
最寄り駅につき、改札口まで急ぐ。
待ち合わせに選んだのは、改札を出て、すぐのところ。
今日は休日ということもあって、人がたくさんいる。
だけど、すぐに分かる。
いつも、隣で見てきたから。
一宮 みこ
一宮 みこ
修斗くん!
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
みこ先輩
お互いを見つけたのは、ほぼ同時。
久しぶりに顔を見た。
やっと、名前を呼んでくれた。
一宮 みこ
一宮 みこ
(そうだ、修斗くんが言ったんだっけ)
『だって、俺が来なくなったら、みこ先輩寂しいでしょ』
一宮 みこ
一宮 みこ
(ずっと寂しかった)
一宮 みこ
一宮 みこ
(ずっと会いたかった)
一宮 みこ
一宮 みこ
(一番、顔を見たかった)
一宮 みこ
一宮 みこ
修斗くんは、すごいね
一宮 みこ
一宮 みこ
いつも、私が会いたくなる前に、そばにいてくれる
だから、気づかなかった。

会いたくなって、やっと気がついた。

そばにいることが当たり前で、大切な時間だったことを。
修斗くんが、そばにいる。

すぐそこにいる。

……泣きそう。
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
そんなの、簡単です
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
俺がいつも、みこ先輩のことを考えてるからです
修斗くんは、真剣な表情で私を見つめる。
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
俺は、雅志先輩みたいに車も持ってないし、あの人のような、大人の余裕もない
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
みこ先輩が、雅志先輩を好きなのは知ってる
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
でも俺は、みこ先輩が好きです。それだけは、雅志先輩に負けない自信がある
修斗くんの顔が、真っ赤に染まっている。
きっと、私と同じ。
一宮 みこ
一宮 みこ
分かってないよ、修斗くん
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
っ……!
修斗くんは、ハッと息をむような、音にならない声を上げる。
それは、私が彼の胸に飛び込んでいったから。
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
え!? みこ先輩……
一宮 みこ
一宮 みこ
大人じゃなくていい
一宮 みこ
一宮 みこ
私は、修斗くんとの帰り道が好き
一宮 みこ
一宮 みこ
……帰り道以外も、好き
一宮 みこ
一宮 みこ
そこに、私以外の女の子がいるのは、嫌なの
胸に埋めた顔を、上げる。
一宮 みこ
一宮 みこ
私も、ずっと修斗くんのことばっかり考えてるよ
視線が重なって、修斗くんの瞳に私が映っている。
一宮 みこ
一宮 みこ
これからも、一番近くにいたい
一宮 みこ
一宮 みこ
大好き
高校を卒業して、今日はひとり暮らしのための、引越しの日。
一宮 みこ
一宮 みこ
修斗くん、手伝ってくれて、ありがとう
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
ううん、男手おとこで必要でしょ
引越し業者には頼まず、朝から両親と修斗くんが、荷物の運び込みを手伝ってくれた。
段ボールを全て部屋に入れて、ひと休み。
ママ
ママたち、お昼買いに行ってくるわね。リクエストがないなら、適当に買ってくるけど、いい?
一宮 みこ
一宮 みこ
ありがとう
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
すみません、ありがとうございます
両親が出かけて、狭い部屋には私たちふたりだけ。
ソファーもまだ準備していないから、床に直で座る。

冷たくて気持ちいい。
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
みこ先輩は、実家から通うのかと思ってた
一宮 みこ
一宮 みこ
通えなくはないんだけど、学校に近い方がいいしね
あの日、マネージャーと一緒にいたのも、部活の買い出しに駆り出されただけだと、誤解も解けた。
両想いになってから、私たちの関係に、進展はない。
卒業式後も大学に入るための準備に追われていて、息付く暇もなかった。
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
はー、俺も早く大人になりたいな
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
大学生と高校生ってなると、全然違うじゃん
修斗くんは、ねるように、唇をムッと結ぶ。
一宮 みこ
一宮 みこ
(可愛い)
一宮 みこ
一宮 みこ
(……って言ったら、ますます拗ねるだろうな)
一宮 みこ
一宮 みこ
そんなこと気にしてたんだ
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
結構、でかい問題だから
一宮 みこ
一宮 みこ
そんなことないよ。修斗くんは、私と同じスピードで歩いてくれるからね
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
なんかよく分かんないけど、それって、帰り道の話?
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
あれは別に、優しさでみこ先輩のおっそい足に合わせてたわけじゃないけど
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
前じゃなくて、隣にいた方が、いっぱい顔見れるからだし
そう言う横顔が愛しくて、手を伸ばす。
修斗くんの肩に手を置いて、頬にキスをした。
一宮 みこ
一宮 みこ
……図書室でやられたから、お返し
驚きで、私を見つめる顔は、真っ赤。
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
……気づいてたんだ
一宮 みこ
一宮 みこ
気づいてたよ
一宮 みこ
一宮 みこ
起きてる時にしてくれたら、もっと嬉しかったんだけどな
見つめ合って、自然と顔が近づく。
ぶつかったのは、鼻と鼻。
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
……
一宮 みこ
一宮 みこ
……、ふふ……っ
笑い合いながら、手を繋ぐ。
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
はー、かっこわる
一宮 みこ
一宮 みこ
いいじゃん、別に。大人になるのは、急ぐことないよ
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
まあ、いっか。どうせ一生離さないし、ゆっくりで
一宮 みこ
一宮 みこ
こっちのセリフだけどね
この先の未来にも、隣に君が見えるから。

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