第19話

合格祈願デート④
6,240
2021/12/11 04:00
赤く染まった顔が、こちらを向く。
雅志先輩のこんな顔は、初めて見た。
一宮 みこ
一宮 みこ
え、あ、あの……
三笠 雅志
三笠 雅志
みこも、真っ赤だよ
一宮 みこ
一宮 みこ
!!
一宮 みこ
一宮 みこ
当たり前じゃないですか……。すでに、コート脱ぎたいくらい、暑いです
三笠 雅志
三笠 雅志
そっか
それでも、雅志先輩はポケットの中の手を離してはくれなくて、
ガチガチにかたまったままの私は、その手を握り返せなかった。
本堂までの石段を上がり、参拝客の列に並ぶ。
同じくらいの年頃の男女や、親に連れられた中学生くらいの顔立ちが、多く見える。
一宮 みこ
一宮 みこ
(学業成就にご利益がある神社って、本当なんだ)
一宮 みこ
一宮 みこ
(今の時期だし、大体の人が受験の合格祈願かな)
順番が回ってきて、お賽銭箱さいせんばこの横に書いてある、参拝の形式を見ながら、それにならうことにする。

鈴緒すずおを両手でつかんで揺らすと、ガラガラと大きな音が鳴った。
お参りを済ませ、本堂から立ち退く。
すぐそばで、お守り、おみくじ、絵馬や御札おふだが売っているところを見つけて、立ち寄ることにした。
一宮 みこ
一宮 みこ
いっぱい種類がありますね。どれにしよう……
三笠 雅志
三笠 雅志
お守り欲しいの? 僕が買うよ
一宮 みこ
一宮 みこ
いえいえ、そんな! ここまで連れてきてくれて、お参りに付き合ってくれただけで、充分です
三笠 雅志
三笠 雅志
そっか……
一宮 みこ
一宮 みこ
可愛いのがいいなぁ
一宮 みこ
一宮 みこ
雅志先輩は、自分の時には、お守り買いました?
三笠 雅志
三笠 雅志
いや、僕の時は、おみくじ引いただけ
一宮 みこ
一宮 みこ
どうでした?
三笠 雅志
三笠 雅志
一宮 みこ
一宮 みこ
えっ
三笠 雅志
三笠 雅志
それでも、合格はしてるからね。ここの神社のお参り効果は、僕が身をもって証明してるから
一宮 みこ
一宮 みこ
確かに。本当ですね
昔ながらの、いかにもなお守りという風貌ふうぼうのものから、バッグチャームやストラップとしても違和感のないような、可愛いものまで、様々。
お守りは、学業の他にも、安産、健康、勝利、夢など。
幸福と書かれた、誰にでも対応出来そうなものまである。
一宮 みこ
一宮 みこ
……
一宮 みこ
一宮 みこ
(よし、決めた)
一宮 みこ
一宮 みこ
すみません、お守り欲しいんですけど
巫女
はい、どれにいたしますか?
お守りを買い終えて、後ろを向くと、そこに雅志先輩はいなかった。
一宮 みこ
一宮 みこ
あれ?
キョロキョロと見回すと、少し離れた場所に後ろ姿を見つけた。
一宮 みこ
一宮 みこ
せんぱ──
名前を呼ぼうとしたら、すぐ近くに、女の子の三人組がいることに気づいた。
頬を染めて見上げる女の子たちと、少し困ったように笑う雅志先輩。
一宮 みこ
一宮 みこ
(神社で、連絡先聞かれてる?)
ばち当たりな気が、しなくもない。
一宮 みこ
一宮 みこ
(初デートの時と同じだ……)
一宮 みこ
一宮 みこ
(あの時も、声かけられまくってたし)
そんな人が、私を好きだと言ってくれた。
別れた今でも。
物語のような出来事。

現実感がない。
一宮 みこ
一宮 みこ
(女の子たち、みんな可愛いな)
視線に気づいたのか、雅志先輩が私の方を向いた。
嬉しそうに笑う顔に、胸がドキッと跳ねた。
三笠 雅志
三笠 雅志
みこ!
ずっと、不思議に思っていることがある。
一宮 みこ
一宮 みこ
(なんで、私なんか……)

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