第15話

……キス?
7,783
2021/11/13 04:00
放課後になっても、修斗くんは私のクラスに顔を出さなかった。
いつもなら、部活に行く前に、必ず声をかけに来てくれるのに。
ギリギリまでねばったけれど、時計を見たらすっかり部活の始まる時間。
真白
あれ? 今日はバスケ部のイケメン後輩くん、来てなくない?
一宮 みこ
一宮 みこ
うん、来てないよね……
真白
うわ、暗っ
真白
忙しいだけだったんじゃない?
一宮 みこ
一宮 みこ
ううん……。放課後、どんなに急いでても、必ず来てたの……
真白
みこ、何気にあの後輩くんが来るの、待ってたんだね
真白
でも、帰りは一緒なんでしょ?
一宮 みこ
一宮 みこ
修斗くんが嫌じゃなかったらね……
真白
めっちゃネガティブじゃん
真白
あんた、なんか余計なこと言ったんじゃない?
一宮 みこ
一宮 みこ
雅志先輩の話、しただけだよ
真白
雅志先輩って、元カレの? 去年卒業した、あの?
一宮 みこ
一宮 みこ
うん
真白
100パーそれが原因でしょ
一宮 みこ
一宮 みこ
うん……。修斗くん、雅志先輩のこと嫌いだから
一宮 みこ
一宮 みこ
(朝の会話だけじゃ、修斗くんの誤解はちゃんと解けなかったのかな)
真白
じゃなくて
一宮 みこ
一宮 みこ
え?
真白
いいや、めんどいから。帰るね~
一宮 みこ
一宮 みこ
ちょっと、真白ー!
意味深な言葉を残して、真白がいなくなり、私は重たい腰を上げて図書室へ。
一宮 みこ
一宮 みこ
(今日は、昨日渡されたプリントをやらなきゃ……)
一宮 みこ
一宮 みこ
……
一宮 みこ
一宮 みこ
(終わったら、私の方からバスケ部にむかえにいってみようかな)
一宮 みこ
一宮 みこ
(まずは勉強! あとは、それから!)
そんな気合を入れて、ペンを握ったのはいいものの……。
一宮 みこ
一宮 みこ
うーん……
まぶたを開く。

頭がボーッとする。
窓の外が、ずいぶん暗くなってしまった。
一宮 みこ
一宮 みこ
一宮 みこ
一宮 みこ
(また寝てた!)
慌てて時計を見ると、バスケ部の練習は終わっている時間だった。
一宮 みこ
一宮 みこ
(少し早めにここを出て、体育館に行こうと思ってたのに……)
プリントは最後まで記入してはいるものの、最後に近づくにつれて、ミミズが這ったような線が残っている。
一宮 みこ
一宮 みこ
(読めない……)
帰宅したら即書き直しを決めて、机の上を片付ける。
一宮 みこ
一宮 みこ
(バスケ部に行かなきゃ)
一宮 みこ
一宮 みこ
(今ならまだ間に合う)
そう思って、慌てて帰り支度をしていると、こちらに向かってくる靴音が廊下から聞こえてきた。
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
みこ先輩、帰ろ……──
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
……また寝てるし
一宮 みこ
一宮 みこ
(寝たふりしちゃった……!)
一宮 みこ
一宮 みこ
(び、びっくりした。修斗くん、来てくれたんだ)
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
みこ先輩、絶対勉強するの向いてないよ
一宮 みこ
一宮 みこ
(なんだと)
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
大学入る気あんの?
一宮 みこ
一宮 みこ
(すみません)
ひとりごとに心の中で回答しつつ、完全に起きるタイミングを逃してしまった。
一宮 みこ
一宮 みこ
(どうしよう……)
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
みこ先輩
一宮 みこ
一宮 みこ
……
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
……寝てる?
一宮 みこ
一宮 みこ
(いつ起きよう)
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
……
一宮 みこ
一宮 みこ
……
視界がない分、他の感覚に神経が集中する。
一宮 みこ
一宮 みこ
(……え?)
一宮 みこ
一宮 みこ
(今……、頬にやわらかいものが……?)
一宮 みこ
一宮 みこ
(今のって……)

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