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第1話

放課後から始まる
30,822
2021/08/07 04:00
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
先輩
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
ねーねー、みこ先輩、聞いてます?
一宮 みこ
一宮 みこ
え? あ、ごめん、修斗しゅうとくん。なんだっけ?
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
ほら、やっぱり聞いてなかったんじゃないですか
ここは、私、一宮いちみやみこが通う高校の、三年生の教室。

目の前で、一歳年下の二年生、五十嵐修斗いがらししゅうとが、不満げに眉を寄せている。
彼とは、バスケ部の元仲間という関係性。

二年生の修斗くんはまだ現役バスケ部だけど、三年になった私は、今年の夏にバスケ部マネージャーを引退した。
部に在籍中の時からずっと、部活前にわざわざ私の教室まで迎えに来ていた、修斗くん。

私が引退して、夏服から衣替えをした今でも、その癖が抜けないのか、彼は毎日部活前に会いに来る。
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
なんか、ずっとボーッとしてましたね
一宮 みこ
一宮 みこ
うん……。実はね、今日から家庭教師の先生が来ることになって
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
あー、みこ先輩、頭悪いから、親が心配して決めてきたんだっけ
一宮 みこ
一宮 みこ
一言余計だよ。もう、生意気ー!
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
いててて
ぎゅうっとやんわりと頬を引っぱると、修斗くんはわざとらしく痛がった。
一宮 みこ
一宮 みこ
知らない人と、ふたりきりで部屋で勉強することになるでしょ? 緊張するなーって。そのせいで、ボーッとしちゃってた
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
先生って、大学生なんだっけ?
一宮 みこ
一宮 みこ
うん、そうみたい。私の志望校に通ってる人なの
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
男? 女?
一宮 みこ
一宮 みこ
男の人
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
……
一宮 みこ
一宮 みこ
あー、やだな。緊張するし、勉強もやだ。さっさと受験なんて終わればいいのに
一宮 みこ
一宮 みこ
あ、ごめん、修斗くん。そろそろ帰らないと、先生が来る時間になっちゃう
一宮 みこ
一宮 みこ
修斗くんも、部活でしょ? 頑張ってね
スマホで時間を見て、席を立つ。

席の目の前にいた修斗くんは、廊下に出た私をすぐに追いかけてきた。
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
みこ先輩
一宮 みこ
一宮 みこ
なに?
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
家に来た先生が、もし変な奴だったら、連絡して下さい。部活中でも、すぐに助けに行くから
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
どんな人か分かんないのに、男とふたりきりなんて、危ないじゃないですか
真剣な表情で言われて、パチパチとまばたきをする。
一宮 みこ
一宮 みこ
部活中、スマホ持てないでしょ?
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
大音量にして、コートに置いておきます
一宮 みこ
一宮 みこ
あははっ、怒られるよ。コートに置いてたら、踏まれちゃうって
五十嵐 修斗
五十嵐 修斗
踏まれるくらい、別にいいし
一宮 みこ
一宮 みこ
ありがとう。頼りにしてる
いつもは人をからかってばかりの修斗くんが、そんなことを言ってくれたのが嬉しくて、私は手を振って廊下を急いだ。
一宮 みこ
一宮 みこ
(おかげで、少し気持ちが落ち着いたな)
一宮 みこ
一宮 みこ
ただいま
ママ
おかえり。遅かったじゃない。もう先生来てるわよ
一宮 みこ
一宮 みこ
えっ!?
一宮 みこ
一宮 みこ
あれっ? 私、遅刻してないよね?
時間を見る。
一宮 みこ
一宮 みこ
(あ、でも、五分前か。ギリギリだったな)
ママ
もう部屋に行ってもらってるから
一宮 みこ
一宮 みこ
う、うん……
ママ
あとで、お茶とお菓子持っていくわね
一宮 みこ
一宮 みこ
ありがとう
ドキドキと騒がしい胸に手を当てながら、自室の扉を叩く。
一宮 みこ
一宮 みこ
遅れてごめんなさい。今日からよろしくお願いしま……──
部屋に入りながら、あいさつをする。

言い切る前に、止めたのは……。
一宮 みこ
一宮 みこ
雅志まさし先輩……!?
三笠 雅志
三笠 雅志
やっぱり、みこだったんだ
──そこにいたのは、元カレだった。

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