ここは、私、一宮みこが通う高校の、三年生の教室。
目の前で、一歳年下の二年生、五十嵐修斗が、不満げに眉を寄せている。
彼とは、バスケ部の元仲間という関係性。
二年生の修斗くんはまだ現役バスケ部だけど、三年になった私は、今年の夏にバスケ部マネージャーを引退した。
部に在籍中の時からずっと、部活前にわざわざ私の教室まで迎えに来ていた、修斗くん。
私が引退して、夏服から衣替えをした今でも、その癖が抜けないのか、彼は毎日部活前に会いに来る。
ぎゅうっとやんわりと頬を引っぱると、修斗くんはわざとらしく痛がった。
スマホで時間を見て、席を立つ。
席の目の前にいた修斗くんは、廊下に出た私をすぐに追いかけてきた。
真剣な表情で言われて、パチパチとまばたきをする。
いつもは人をからかってばかりの修斗くんが、そんなことを言ってくれたのが嬉しくて、私は手を振って廊下を急いだ。
*
時間を見る。
*
ドキドキと騒がしい胸に手を当てながら、自室の扉を叩く。
部屋に入りながら、あいさつをする。
言い切る前に、止めたのは……。
──そこにいたのは、元カレだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。