第18話

4-5 信じがたい真実
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2023/04/02 11:10

七氏或汰
さきほども言ったが、
神が俺にかけた術は織姫おりひめ以外の人間との接触を避けるためのもの
七氏或汰
だがもし織姫にめぐり逢えたら、
俺の織姫への気持ちに反応して、結界の影響を受けることなく触れ合える――
七氏或汰
そう神から聞かされていた。
そして実際にそのとおりのことが起こった
織原みどり
つまり、気持ちがあったから触れ合えたってこと……?
七氏或汰
そうだよ。
もし俺がおまえのことを好きじゃなかったら、
絶対に触れ合うことはできなかった
七氏或汰
そしておまえの気持ちも……
織原みどり
えっ、あたしも!?
七氏或汰
……うん


 彼はめずらしく言葉を詰まらせた。

 白い肌がほんのり赤らんでいる。

 口元には優しげな微笑が浮かんでいるけれど、ちょっと戸惑ったような、それでいて照れくさそうな、いつもの冷静沈着な面差しにはない感情が垣間見える。


七氏或汰
俺のこと、好きって想ってくれてなかったら、
結界の影響で触れ合えなかっただろうから……
織原みどり
(はわぁぁぁぁぁっ!?
 ひと目惚れってバレてたぁ~~~っっっ!)


 赤面、絶句、硬直の三点セットにやられて、棒立ちになるあたし。

 彼も恥ずかしいのか、あたしを見てからかってくるわけでもなく、顔はお風呂上りみたいに|上気|《じょうき》している。

 気持ちを落ち着けるかのようにまばたきを繰り返すと、急ぎ気味な口調で言った。

七氏或汰
と、とにかく、結界に妨げられなかったってことは、
おまえが織姫であるまぎれもない証拠でもあるんだ
七氏或汰
俺の想いは、ふたりが出逢った遥か昔からずっと、
織姫おまえだけに注がれてるから
織原みどり
(あたしだけに……?)
織原みどり
じゃあどうして、
あのとき〝必要ないよ〟って去って行っちゃったの?
七氏或汰
あのときは事情があったんだ。
本当はこうしておまえともっと話をしたかったんだが……
織原みどり
どういうこと?
七氏或汰
あのとき急いであの場を去らなければならなかったのは、
自分の望みを叶えた代わりに、
神に祈りを捧げなくてはならないという神託しんたくが下されていたからなんだ
織原みどり
神託……?
七氏或汰
要するに神からのメッセージだよ。
俺を迎えに来たジイさんがいただろ?
織原みどり
あ、うん
七氏或汰
あのジイさんは、
かつて俺たちの転生を手助けしてくれた人物の子孫で、
巫女のように神の神託を受ける役目を果たしている
七氏或汰
今回のことでも、俺にいろいろと協力してくれたんだ
織原みどり
じゃあ、全然悪い人じゃなかったんだね……


 あの真っ黒なサングラス姿の老人に感謝したい気持ちが湧きあがる。

 神とかいわれると信じがたいところもあるけれど、あたしと出逢うために彼はこれまで大変な思いをしてきた。それを思うと、じんわりと感動が広がっていく。

 あたしの胸に、どうしようもないくらいに熱い想いがこみ上げていた。












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