《あなたside》
このままじゃあかんわ、気持ち切り替えんと...
そうは思っても、やはり目の前での舎弟の死は耐え難いものだった。
なんであの時躊躇したんや...もしも俺が止まらずに助けにいってたら、きっと苅込は...
俺は村雨町を歩きながら一人後悔していた。
すると前から人の気配を感じた。
俺は苅込の死を話した。
浅倉の兄貴は「そうか」、といい、続ける。
俺は浅倉の兄貴について行った。
そう案内されたのは、村雨町の支部の中にあるひとつの部屋だった。
聞くとここは隠し部屋みたいなものとのこと。
初めて入ったな...
少しだけ他愛のない話をした後、兄貴はさて、と本題を切り出す。
不意打ちの質問にすぐ答えられなかった。
俺は何とか言葉を絞り出し、苅込が目の前で死んだことまで全てを伝えた。
俺を不安にさせないようにしているのか、そう聞く声は優しかった。
俺はゆっくりと口を開く。
苅込...
俺にはまだ後悔が残っていた。
なんで戦争なんか...戦争なんかせんければ、苅込も韮澤も、ほかの舎弟も死ぬことは無かったのに。
浅倉の兄貴は何かを考え込んでいる様子だ。
そして次の瞬間、兄貴から投げられた言葉は驚愕するようなものだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。