意識を失った俺が目覚めたのは、どこかのベッドの上だった。
ここどこだ...俺、道端で倒れたはずじゃ...
手当までされてる...誰かがやってくれたのか?
起き上がるのも一苦労だ...
こんなところに居ないで、早く兄貴達の元へ行こう。
俺がベッドから降り立ち上がろうとした時、ある声が聞こえる。
俺の視界に映ったのは__
京極組の久我虎徹だった。
こいつ...確か以前天羽組と戦ってた組のやつだ。
2つの組の仲は修復されたと聞く...まずいな、天王寺組とはバレないようにしないと。
大阪人だとバレないように標準語で話す。
意外に難しいな...
それと同時に、部屋のドアがバン!と音を立てて開く。
なんか色々騒がしいな...
それに気づいた久我が俺に言う。
花沢...佐古...どちらも聞いたことない名前だ。新しい舎弟か?
名前だけならバレないよな...?
花沢が屈託のない笑顔でそう言い終わると、久我が本題だとでも言いたげに俺に話しかける。
...まずい、どう言い訳しよう...
転んだだけでこんな怪我はしない...何か、何か言い逃れできるような言葉は...
そうこう考えていると、久我が口を開く。
思わず声が出る。
...やっぱり同業の人にはバレるか。
...この人たちなら、話しても良さそうだけど。
一応隠しとかなきゃな。
思わず俺は笑みがこぼれた。
ここ、雰囲気いいな...別に天王寺組が悪いわけじゃないけど...
少なくとも、仲間を大切にしてそうで。
正直、今立ち上がっただけでもかなり痛い。自身の重みと重力が怪我をしている腹にのしかかって、圧迫感が強くなる。
だけど...ただでさえ人手不足な天王寺組を、休む訳にはいかないから。
そう言って俺は部屋を出ていった。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!