キ ケ ン な 味 と 香 り / ep.12
‘ 誰か携帯なってねぇ?
部員の一人が、
栞のいるほうのロッカーを見た。
r ‘あぁ多分俺のですよ ... 。すみません、多分友達だから、ほっといてもらっていいんで。
蓮がしれっとした表情で言う。
‘ほんとに友達かー??まさか彼女なんじゃねぇの?
学年一モテるのに、
誰とも交際しているという噂を聞かない蓮に
皆は色々な詮索をする
r ‘さぁ ... 。もしかしたらそうかもしれませんけど
少し笑いを含んだ声でそう言うと、
みながやっぱりいるのかと騒ぎ出す。
その騒ぎに乗じて、
蓮はリモコンの調節つまみを最大に上げると
栞が溜まらずその場に座り込んだ。
’きゃ!栞ちゃん!?
頬を真っ赤に染めて、荒い息をしている栞。
隣にいた同じくマネージャーが
驚いて声を出す。
s “だ … 大丈夫です ... ちょっと眩暈が ... 。
その潤んだ瞳と、
掠れた声に部員達が息を呑んだ。
いろっぺー … 誰かがついついボソリと
漏らした声に、蓮がちっと舌打ちをする。
‘もういいから、帰れ来栖 … 。制服に着替えるか?
s “は … い。
そう言うと
よろよろとロッカーの後に消える栞。
女子用の更衣室は無いため、
ロッカーで目隠しされた場所がマネージャーの
着替えの場所であったが
シュルシュルと聞こえてくる衣ずれの音に、
またも皆の頬が染まる
なんか … あいついつにも増して
色っぽくねぇ?
ボソボソと、あちこちから興奮した声が
上がり、蓮はしまったという顔で
天井を見上げる。
r ‘俺 … 湿布足らなかったからもらってくるんで … 来栖連れて行きますよ、保健室。
着替え終わって制服で出てきた栞の腕を
引っ張りながら、演技をするのももどかしく
蓮は部室を後にした — 。
next. __________
✒︎ chloé
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!