第43話

ep. 40 藍の記憶¿
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2018/09/16 01:57
キケンな味と香り  /  ep. 40





s “ わぁ ... もう真っ暗!



放課後突然に委員会を変わってくれと頼まれ、

全てを終えた栞が家路についたのは、

もう日も暮れかけた時間だった。



s “ 早く帰んなきゃ ... お父さん、待ってるだろうな ... 。



校庭を駆け抜けようとすると、

背後から人の気配を感じた。



s “ あ ... よ、吉澤先輩 …



そか、サッカー部も … いま終ったんだ。



r ‘ ... あぁ。



ボソリと話す蓮に、栞が驚いた。

わ、初めて話してもらっちゃった。



s “ 吉沢先輩はは部活ですか?大変ですね、たしかもうすぐ …

r ‘ … もうすぐ留学だしな

s “ はい … するんですよね?留学。



自分の動向を知っている栞に

ちょっと驚いた様子の蓮。



蓮にサッカー留学の話があがっているのは

生徒全員の知るところだったのだけれど。



自分のコトを他人の方が良く知っている事は

しょっちゅうなのでそのまま無言で通す。



s “ す … すごいですよね?たしか …

r ‘ おめー ... 。田代と委員かわったの?



会話を何とか持たせようと

必死な栞の言葉をさえぎって蓮が告げた。



今日の委員会、田代という女子生徒から

変わってくれと頼まれたのは事実だったが

この事を蓮が知っていた事に栞は驚いた。



s “ あ、はい。今日彼女大切な用事があるんだそうです

r ‘ ... 男だろ、どうせ。

s “ アハハ、彼氏なんですってね? … うらやましいなぁ。

r ‘ 知ってたのかよ … 断ればよかったのに。



何となく、二人並んで歩き出す。



よかった … この公園の前って、

確か痴漢が出るから気をつけろって

言われてたばかりなんだよね。



r ‘ 大丈夫なのか ... その ...



二人並んで歩いていても会話が無く、

何となく押し黙っているところに

蓮が急に口を開いた。



s “ え?


r ‘ いや。おめー ... 家事とかやってんだろ?帰りこんなに遅くなって ... いいのかな,と思って

s “ な、なんでそのこと?



誰にも言ったこと無かったのに ... 。

親友の梓にも。



r ‘ ... 手、見たらわかる。



栞はカバンを持って前で組んでいた手を

思わず背中に隠す。



細く白い小さな手は、

指先にアカギレが出きていて、

ほんの少し荒れている。



s “ あは ... 。気付いちゃいました ... ?恥ずかしいなぁ。

r ‘ ... なんで恥ずかしいんだよ。

s “ だってこんな荒れちゃって ... 。前の学校では主婦みたいって …



r ‘ 恥ずかしくなんてしなくていいのに



s “ ... え ... ?



r ‘ だってそれは頑張っている証拠だろ?恥ずかしくともなんともないだろ



栞の言葉を聞いていられないというように、

蓮が思わず言った。



しかし、あまりにも驚いたような表情で

栞見つめられ



r ‘ あ!いやその、つ、爪とか伸ばしてるヤツって嫌いでよ、だから …

s “ あ、ありがとうございます。そういう風に言われたの初めて … 。

r ‘ ... べ、べつに ...



栞の家の明かりが見えてきた。



俺こっちだから …

そういう連はと栞から離れていく。



s “ ただいまぁ、お父さんごめん!すぐ夕飯にするからね!

“ おぅ、早くしてくれー .. 。



買い物に行く暇が無かったから、

今日はありあわせのもので ...



冷蔵庫を開けて、

自分の傷ついた手の甲を見つめる。



同級生の子達と違う、荒れた両手。



だけど ... がんばってるもんね?



そう思って、

すべすべの頬に自分の掌を当てた。



吉沢先輩 … 。

冷たい人だと思ってた。

いつも話もしてくれないし、だけど。



見ていてくれてたんだ … 私の事。



この日から

栞の心には、連の名は、深く深く、刻まれた。





next. __________

✒︎ chloé

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