無料ケータイ夢小説ならプリ小説 byGMO

前の話
一覧へ
次の話
161
2021/09/23

第5話

第5夜-鍵🗝





鍵を持っていた。



どこのものともしれない鍵を🗝






それを

幼い頃の僕は
いつしか大事にしまっていた。





そして

あるときから

時折出しては眺めて




何かを思いついた僕はちょっと良い感じのリボンを通して首から下げて




友達に自慢げに見せはじめた。










大事な鍵なのだ-と

そう言うと




仲間からそれは羨ましそうに見られて


僕は気分を良くしていた。





















ところが そんなある日





それがどういうわけか

当時通っていた同じ学校の不良の人間の耳に入り、


僕は そいつに

その鍵を奪い取られてしまった。








そいつと一緒にいた他の仲間に羽交い締めにされ


それを

川に投げ入れられた。









僕は


愕然とした。








大事な

大事な鍵だった。











しかし








そのとき


そいつの仲間の1人が言い放った言葉に

僕は息を飲んだ。








あなた「ただの鍵だろう。




いや、そもそも






お前のものでもないだろう。」










-ドクンと胸が鳴って


それまで騒いでいた他の奴らが


その瞬間 シン…ッと静まり返る。




どういうことだと顔を見合わせ


僕は


何も言えなかった。







僕「…違う、アレは、本当に、大事な…。」






あなた「では、なんの鍵だ。」






僕「…そっ それは… 。」-(たしかアレは










-(誰もいない公園で







-(砂山の中に








-(あの鍵は埋まっていたのだ。







-(きっと



-(誰かが失くしたというだけの



-(ただの鍵に過ぎない、)







仲間A「なんだ嘘かよ、」


仲間B「つまんねーな。」


仲間C「バッカじゃねーの?」









僕は



罵倒されながら







「違う、違う」と叫び続けた。






守るものなど




ありやしないのに






何をそんなに


躍起になっていたのか分からない。









それとも




僕は





自分は何か





素晴らしいものを持ち合わせているのだと






思いたかったのか。









自分は何も






空っぽではないと。












-(本当は空っぽなのに。)







僕「違う、違うったら…!」








僕は “ 空っぽ ” ではない。









僕は決して









“ 空っぽ ” などでは… !

















-





-









僕は

何かに手を引かれ、

顔を上げた。









同僚「何をしている。」







僕「…!ボクは、何をしていたのだろう。」




僕は街灯の下にいた。



仕事先から家に戻る途中で

この長く続く細道の街灯

その下を足元を見ながら歩いていたら、

ふっ…と何だかそれが延々と続いていくような気がして

具合が悪くなってしまったようだった。





同僚「キミはじっと、ずっと街灯の下にいたよ。


足元を見て


ぼうっと立っていると思って見ていたら、


そのうち苦しい顔をしだしたから


俺が手を引いたのだ。」






僕「…そうか。ありがとう、助かった。」




僕は

じとっと汗で濡れる自分の額を拭った。

拭うと、そこから更にひやりとして

みぞおちのあたりがグゥっと引き攣るような感覚がした。



貧血だ、と思った。




同僚「あまり、」






僕は同僚のいる方を見た。




同じ勤め先の同僚は

会社からの帰りの道中

僕を見かけて声をかけてくれたのだろう。



同僚の顔はその奥にある街灯のせいで逆光にあって見えなかったが


その話す口調は優しくもあり

だが、どこか真意が掴めなく

何故か恐ろしく感じた。







同僚「あまり、1つのことばかり囚われてはいけないよ。



そこにばかり明かりが当たって、


まるでそれしか無いように

キミには見えているのかもしれないが




それだけ見えているとキミが思っているだけで

キミのその目には

本当は他にも色んなものが映し出されているのだから。










囚われてはいけない。













囚われてはいけないよ。」




同僚が、手を差し出す











同僚「-ホラ。俺は、これを












-これを、キミに返しにきた。」









僕「-









あっ。」













ハッと再度 顔を上げると






そこにいたと思っていた同僚は


いつの間にか


その場から居なくなっていた。






そして
意識がだんだんとはっきりして



ふと 引かれた手を見ると

あのときの鍵が🗝僕の手に握られている気がして





だが



やはりそこには何も無かった。







僕「… ?」







おかしい… 、いや




鍵があると “ 感じた ” こと自体がおかしいのか。?







不思議な感覚だった。






あの鍵のことも



ついさっき喋った先の存在(同僚)のことも


段々と記憶の中で露わになっていき。







僕は『久しく』思い出した。




















-







翌日、僕はその同僚が病院の床(とこ)で亡くなっていた事を知った。





何故 あの会社で再会した際に自分が奴を思い出さなかったのか


奴は何故そのことを僕に話さなかったのか。


それとも

ヤツはそのことを俺に悟られまいとしたのか?





今となってはそれは分からない。




-完-
---------
補足):同僚の正体が十数年前のあの日、川で『僕』の鍵のことを皆の前で暴露した『あなた』だったと言う話。『あなた』が何故黙っていたのか、『あなた』は一体どんな気持ちでこれまでいたのかを想像して欲しい。コメントお待ちしてます。

(このお話以外のもお待ちしてます。)2021.9.某日追記