‥‥‥‥と、言うことで。
はしゃいでいた蓮水さんに、神代くんの軽いチョップがきた。
あれから、蓮水さんの提案で遊園地に行くことになった。
私は‥‥‥うん。そういう流れだったから断れなかったんですよ。
それに何故か、巳陸くん?も来てるし地味に檜垣くんと仲良いし‥‥‥もう考えるのは面倒臭い。
蓮水さんは遊園地の地図を手に、歩き出す。
他の皆も蓮水さんに付いて行った。
けれど、何故か神代くんだけ私の隣にいた。
神代くんは、とても幸せそうに笑う。
その時、私は確信した。
すると、神代くんは私の目を逸らした。
‥‥‥けれど、耳は真っ赤。図星だ。
何かを失った顔‥‥‥?
神代くんはまた、優しく、幸せそうに、柔らかく微笑んだ。
蓮水さんは笑って、私に手を伸ばす。
何かを失った顔。
何か‥‥‥‥それはきっと、萩句のことだろう。
萩句が消えた日、泣きたいのに泣けなくて、ただ萩句の名前ばかり呼んでいた。
「萩句、萩句‥‥」って。
まだ、話したいことがたくさんあった。
まだ、一緒にやりたいことがたくさんあった。
まだ、まだ‥‥‥
最期の言葉の返事をしてない。
まだ、言えてないんだ。
『 × × × 』
って。
ジェットコースターを乗り終えて、男子組は飲み物を買いに行った。
蓮水さんはにこっと笑う。
蓮水さんはひゃっひゃと笑った。
‥‥‥じゃあ、何故ジェットコースターにしたのだろうか。
私が、好きそうだったから‥‥‥?
確か蓮水さんが遊園地に皆を誘った理由って‥‥‥
すると、蓮水さんはさっきまでの笑顔を崩し、ほろ苦く笑った。
そうか。そんな顔をしていたのか‥‥‥‥
遥から‥‥‥?
萩句が、幸せ‥‥‥?
蓮水さんは優しく微笑んだ。
今日出会ったばかりの私に、何故ここまでするのだろう。
でも、この人は信頼できる。そう思った。
『 好きだ 』
あの時、萩句は確かにそう告げた。
凄く優しい顔で。
最期に「好きだ」なんて、ずるいよ。萩句。
もっと別かれるのが悲しくなる。
それに、「私も」って返事ができなかった。
だから知りたかった。蓮水さんならそれをどう思うか。
私と違って優しくて、楽しくて、真っ直ぐで。
そんな人の意見は、もしかしたら今の私を変えるかもしれない。
そう、思ったから。
だから知りたかった。蓮水さんの気持ちを。
蓮水さんはいたずらっぽく笑って、私の頬をつねった。
‥‥‥‥泣く。
そして、思いを寄せながら寝る。
そしたら朝が来る。
そこからは萩句のいない、でも萩句が心の隅にいる、普通の生活。
────────とりあえず、泣くんだ。
「萩句、愛といると幸せそうだったよ」
萩句、幸せだったんだ。
「好きだ」
うん、私も大好き。
今日は帰って寝よう。
星の数ほどある萩句との想い出を思い出しながら。
そして朝が来たら、いつもと違う普通の生活を送ろう。
萩句のことを心の隅に置いて。
そうしたらきっと、私が今泣いている意味ができる。
そうしたらきっと、胸を張って人生を送れる。
そうしたらきっと‥‥‥
萩句も笑ってくれる。
私の好きな、あの笑い方で。
私の好きな、あの声で。
ねぇ、萩句。
ずっと、ずっと、ありがとう───────。
-完結-
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。