牢獄に入れられて、何時間がたっただろう。
遥は今、何をしているだろうか。
萩句は、怒っているだろうか。
私、どうなるんだろう...
気合いを入れるために、頬を「バシッ」と叩く。
何の為にかは、分からないけど。
遥...?
ははっ。
命令..か...。
え.....?
召し使いはそう言って、微笑みながら
遥に鍵を渡した。
召し使いは相当、勇気がいったはず。
自分の主の命令を破るのだから。
遥も、初めて命令を破った。
皆、私の為に。
久しぶりに、泣きそうになった。
怖いからじゃない。
嬉しかったから。
自分を助けようとしてくれる人が
とても久しぶりだったから。
「ありがとう」の気持ちでいっぱいになった。
私のせいで皆が...!
領主はそう言って、取り出した札から火を出す。
そして、遥の腕に当てた。
火は、遥の腕で「ジュワァ」という音を出して
遥の腕を燃やし始めた。
遥は、腕が焼かれているというのに
その手を払わなかった。
どうして?
自分の腕が焼かれているのに、何で私なんかを...
私がそう言うと、遥は微笑んだ。
まるで、
「大丈夫。」
と言っているかのように。
領主は、私の腕を無理矢理掴んで引っ張り、
遥に当てていた札を私の顔に当てようとした。
目の前に火がくる。
手足が震える。
きっと、これは恐怖心。
怖い。怖い。怖い...
誰か...
助けて...
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!