お兄ちゃんが私に寄りかかる。
今日は、中学卒業の日。
萩句たちがいなくなって一年が経った。
萩句たちがいなくなってから数日間は社にこもってしまうほどだったけど、遥たちやお兄ちゃんが社から時間をかけて引き出してくれた。
でもやっぱり、ショックだったのは変わらない。
突然、遥が私の頭を優しく撫でてきた。
遥は笑った。
私が不安なとき、遥はいつもこうしてくれる。
その度、私は安心できる。
「いつか、皆は帰ってくる」って。
普段は背が高いだけで頼りない遥だけど、私が弱ると絶対に頼もしくなる。
それって、ずるいよね。
自然と、口元が緩んだ。
いつも通りの遥だ。
社の周りには、桜が沢山咲いていた。
そして...
桜の木の下には、美味しそうなご馳走や酒があり、赤い大きな布が敷かれていた。
誤魔化しやがった...
まあ、いっか。
そして私は、何となく空を見上げた。
快晴。曇りのない空だ。
すると突然、空から折り鶴が落ちてきた。
まるで、鶴が地上に降り立ったかのように。
私は、その鶴を見つめる。
すると、文字が浮かび上がってきた。
『 愛 へ 』
と。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。