高校の入学式。
あれから、私と遥は田舎を出て都会の高校に入学することになった。
まぁ、あのド田舎に高校が無かったという理由なのだけれど。
この高校には寮があるので、私と遥は寮生活をしながら高校生活をすることになった。
秋句たちとは離ればなれの生活だ。
檜垣くんは一年間も随批の所にいた為、中学三年をやり直すことに。
つまり、私の後輩だ。
そして檜垣くんは、珍しく寮がある中学校に編入した。
校長の長い話が終わると、入学式が閉式した。
クラス表を見て、教室に向かう。
そして教室に入ると、自分の名前が書かれた席に座った。
周りを見てみると、もう仲よさそうに話している人たちがいる。
突如、前の席の女の子が私の顔に自分の顔を近付けてきた。
随分とぐいぐい来る子だな‥‥‥
教室に入ってきた遥は、私を見つけて柔らかく笑った。
木野‥‥木野遥‥‥‥‥‥あった。
遥は本当に嬉しそうに笑った。
私も嬉しい。嬉しいのに‥‥‥心に穴が開いた気分だ。
萩句が消えてしまってからずっと、心に穴が開いている気がする。
遥がオドオドしていると、蓮水さんの後ろから声が聞こえた。
どうやら、この男子生徒は蓮水さんと親しいようだ。
すると、男子生徒は溜息を吐いてから口を開いた。
蓮水さんはそう言って、小形の紙パックに入っているイチゴミルクを飲み始めた。
私の質問に驚いたのか、蓮水さんはイチゴミルクを飲むのをやめてむせた。
その必死さが怪しい‥‥‥が、神代くんは何も言わないから幼なじみってことは確かだろう。
担任だろうか。教室に先生が入ってきた。
‥‥‥。
寮の部屋の前で話していた蓮水さんの頭を、神代くんが本で叩いた。
そういう偶然って、あるものなんだ‥‥‥
ここで天然発動ですか。遥さん。
突如、遥の後ろから檜垣くんが現れた。
そんな会話をしていると、また檜垣くんの後ろから声がした。
檜垣くんは諦めたような顔をした。
‥‥‥これは、相当厄介な人らしい。
まだ言ってるのか、それ。
‥‥‥‥‥は?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。