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第1話

出会い
帰る場所を失った。


追い出されたのだ。孤児院から。


あやかしが見える。それだけで。


私は親も親戚もいない。


だから、帰れる場所がない。


ゆういつ、あてになるのがこのメモだ。









十年前...




ここに立っていなさい。
母は、暗い暗い森の中で幼い私にそう言った。
しかし、私は暗い所が苦手だ。
待っていられそうにない。だから、
この場を去ろうとした母の服を掴んで、
待って...
と言った。
すると、母の隣にいた姉が私を突き飛ばした。
いっ...
痛かった。だから、泣いた。
そう、泣いたときだった。
突然、両目に痛みが走る。
暗い中、よく目を凝らすとそこには
紛れもない、私の血が垂れていた。


姉の手にはカッターナイフが握られていた。
私はこれに切られたのだろう。そう、理解した。


痛い。怖い。悲しい。苦しい。

私の中に、たくさんの感情が浮かんだ。


私には泣き叫ぶ力が残っていなかった。
だから、なにもせず、ただただ
苦しんだ。


そして、いつの間にかそこには
母の姿も姉の姿もなかった。


それから、何時間たっただろう。
もう、朝日が少し見えてきた。
このまま死ぬのだろうか。




ガサッ




そう考えていると、後ろから物音がした。


ガサガサッ



まただ。私は、見えるはずがないのに
恐る恐る音のする方に振り向いた。
え...?
そう、見えるはずがなかったのだ。
だから私は、戸惑った。そこには人がいた。
見えるはずのない人が。
あなたは誰...?
秋句
秋句
僕かい?僕は、秋句。君は?
私は...愛。咲原愛。
秋句という人は、とても暖かかった。
今まで、誰も見せてはくれなかった優しい
微笑みを秋句という人は簡単に私に見せてくれた。
秋句
秋句
愛ちゃんか...可哀想に。
両目を切られたんだね...
...
秋句
秋句
よく頑張ったね。もう、
我慢はしなくていいんだよ?
泣いていいんだよ?君は偉い。
秋句はそう言って、私の頭を優しく撫でた。

嬉しかった。実の家族も、クラスメイトも
先生も、誰もくれなかったものをこの人は
初めて会った私に、とても暖かかいもの...
優しさをくれたのだ。それは、どれだけ私にとって
幸せなことだっただろうか。



私は泣いた。体の水分がすべてなくなるんじゃ
ないかと思うくらい。情けない声をあげて。

秋句に、傷つけられたわけじゃない。
ひどいことを言われたわけでもない。
ただただ、嬉しかったのだ。



─────────────────────────────────




秋句
秋句
涙、おさまった?
私は泣いた。一生分の涙をこぼして。
まだ傷が癒えたわけではない。でも、
少し、スッキリした。
うん...
私がそう言うと秋句は、にっこり笑って
秋句
秋句
良かった
と言った。
秋句
秋句
目、痛い?
痛い。切られたときと変わらない。
私は、コクリと頷いた。
秋句
秋句
そっか。じゃあ、僕が治してあげよう
え...?な、治せるの...?
秋句
秋句
うん。少し熱いから、気をつけて
秋句が私の目に触れる。すると、目の奥が
熱くなってきた。秋句の言うとおりだった。
秋句
秋句
...終わったよ。目を開けてごらん
目を開ける。
あ...れ...?
しかし、そこに秋句の姿はなかった。
私がキョロキョロしていると、あの
優しくて暖かかい、秋句の声が聞こえた気がした。


   「帰る場所を失ったらここへおいで。」

   「きっと、君を歓迎してくれるよ。」


そう言った気がした。




─────────────────────────────────



あれから私は、秋句に一度も会っていない。
秋句は何者なのか、あのとき何をしていたのか
私にはまだ、分からない。しかし、あの後
私の目の前に、1枚のメモが落ちてきた。
それは、地図だった。「ここへおいで」
あの言葉は、この地図の中にある場所なのだろう。



帰る場所を失った。だから私は、
この地図の中にある場所に行くことを決めた。

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月渡 雫
月渡 雫
よろしくお願いします(*- -)(*_ _)ペコリ お知らせは「月渡ってるお知らせ」でお伝えします! 私の小説を読んでくれる人だーいすk...((殴 〖連載中〗 ・あやかしの社 ・届けない 届いて 届かない ・364日の手紙 ・forgot me not 〖連載休止〗 ・午後の少女 ・放課後のワルツ ・ユーレイ部は青春がしたい。 〖完結〗 ・星に願いを ・空の彼方 ・ゲームオーバー ・涙のない世界 ・椅子取りゲエム 〖番外編 連載中〗 ・星に願いを 〖連載予定〗 ・夜のともだち ・夢見がち注意報。  ←どんどん増えていく駄作w 〖その他の小説〗 ・月渡ってるお知らせ ・パラレルワールド 〖専用タグ〗 #月渡る 〖今の気持ちをひとことで。〗 “もうすぐ地獄の学年末テスト襲来! それにもかかわらず遊ぶ私!←” 小説いっぱい書きたいのに、追い付かない...(泣) 恐らく、青春とホラーしか書けない人間。笑 皆の小説が面白すぎてやばい。 🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥 ( *´艸`)(  ̄▽ ̄)(///∇///)~(´∀`~)(^-^;(*ゝω・)ノ( ;∀;)( ゚□゚) 🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥🍥 ※不定期更新。 ※“中二病”爆発中。 ※時たま深夜テンション。 ※今日も貫くマイペース。