檜垣悠真。
この間転校してきたばかりの男子だ。
私も化け物だの何だの言われ続けてたから、なんだか親近感湧くな...
私はそう思いながら、檜垣くんを見つめた。
すると、檜垣くんと目が合った。
地味化け物は私で、地味死神は檜垣くんといったところか...
私は長い髪をおろして、雰囲気が暗くなっている。
檜垣くんは長い前髪で、これまた雰囲気が暗くなっている。
「地味」
その言葉は間違っていない。
周りはクスクスと笑っている。
檜垣くんは独り言のように、小さな声で呟いた。
つまんないって...
クラスメイトは何やらコソコソ話し始めた。
檜垣くんは私の腕を引っ張って、教室から出た。
そして、階段の踊り場へと連れて行かれる。
私が戸惑っているのにも関わらず、檜垣くんは私を階段に座らせた。
そして、後ろから私の髪を触りだす。
これは一体...
檜垣くんはそう言って、階段の踊り場にある鏡まで私を連れて行く。
目の前の自分は、別人だった。
髪を檜垣くんが結ってくれたらしい。
檜垣くんの笑う所、初めて見たかもしれない。
なんか、かっこいい。
いいんだ...
.....は?
何なんだ...一体.......
何か檜垣くんに負けた気がする...
────────あ、そうだ。
私は、地味な檜垣くんの前髪を上げる。
少しだけ、意地悪をしたかった。
────────は?
え、ちょっと待って?
檜垣くん、前髪上げたらただの美少年なんですけど?
そんな、初めて会話したとは思えない内容の話をして、その日を終えた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。