第30話

死神
400
2019/04/14 06:37
クラスメイト
ねえ、知ってる?
クラスメイト
ん?
クラスメイト
あそこに座ってる檜垣悠真ひがきゆうまくん、死神なんだよ!
クラスメイト
え?まじ?
クラスメイト
うん。檜垣くん、親がいなくて親戚の家を転々としてるらしいんだけど、檜垣くんが世話になった親戚は皆死んじゃってるんだよ!
クラスメイト
だから、檜垣くんは親戚の命を奪う「死神」なの?
クラスメイト
そうそう。
檜垣悠真。

この間転校してきたばかりの男子だ。
咲原 愛
咲原 愛
死神か...
私も化け物だの何だの言われ続けてたから、なんだか親近感湧くな...

私はそう思いながら、檜垣くんを見つめた。

すると、檜垣くんと目が合った。
檜垣 悠真
檜垣 悠真
何?
咲原 愛
咲原 愛
えっ、いや、何でも...
クラスメイト
うっわ...
クラスメイト
あの地味化け物と地味死神が喋ってる!
地味化け物は私で、地味死神は檜垣くんといったところか...


私は長い髪をおろして、雰囲気が暗くなっている。

檜垣くんは長い前髪で、これまた雰囲気が暗くなっている。


「地味」

その言葉は間違っていない。
クラスメイト
お似合いだねー
周りはクスクスと笑っている。
檜垣 悠真
檜垣 悠真
くだらねぇな
檜垣くんは独り言のように、小さな声で呟いた。
咲原 愛
咲原 愛
...?
檜垣 悠真
檜垣 悠真
いや、何でも
クラスメイト
てかさ、こんなに言われてんのに呑気だよなー
クラスメイト
確かにー!なんかつまんないよねー!
つまんないって...
クラスメイト
あ!そうだ!明日さ...
クラスメイト
え?何々?
クラスメイトは何やらコソコソ話し始めた。
檜垣 悠真
檜垣 悠真
行こ、咲原さん
咲原 愛
咲原 愛
えっ?
檜垣くんは私の腕を引っ張って、教室から出た。

そして、階段の踊り場へと連れて行かれる。
咲原 愛
咲原 愛
え?な、何?
私が戸惑っているのにも関わらず、檜垣くんは私を階段に座らせた。

そして、後ろから私の髪を触りだす。
咲原 愛
咲原 愛
えっ!?ちょ、
檜垣 悠真
檜垣 悠真
黙って
咲原 愛
咲原 愛
は、はい
これは一体...
檜垣 悠真
檜垣 悠真
ん、出来た
檜垣くんはそう言って、階段の踊り場にある鏡まで私を連れて行く。
咲原 愛
咲原 愛
わぁ...
目の前の自分は、別人だった。

髪を檜垣くんが結ってくれたらしい。
檜垣 悠真
檜垣 悠真
ハーフアップ。いつも髪の毛おろしてるから、まとめるのが嫌かなって思ってこれにした。
咲原 愛
咲原 愛
てか、そもそも何で私の髪を結ったの?
檜垣 悠真
檜垣 悠真
地味だから
咲原 愛
咲原 愛
地味男に言われたくない
檜垣 悠真
檜垣 悠真
ははっ
咲原 愛
咲原 愛
あ...
檜垣くんの笑う所、初めて見たかもしれない。

なんか、かっこいい。
檜垣 悠真
檜垣 悠真
ん?
咲原 愛
咲原 愛
いや、何でも...
檜垣 悠真
檜垣 悠真
檜垣 悠真
檜垣 悠真
まあ、いっか。
いいんだ...
檜垣 悠真
檜垣 悠真
明日から、その髪型ね
.....は?
咲原 愛
咲原 愛
何で...?
檜垣 悠真
檜垣 悠真
きっと、クラスメイトは絶句するだろうね
咲原 愛
咲原 愛
???
檜垣 悠真
檜垣 悠真
取り敢えず、その髪型で来ること。良いか?
咲原 愛
咲原 愛
は、はい.....?
何なんだ...一体.......

何か檜垣くんに負けた気がする...


────────あ、そうだ。
咲原 愛
咲原 愛
えいっ!
私は、地味な檜垣くんの前髪を上げる。

少しだけ、意地悪をしたかった。
檜垣 悠真
檜垣 悠真
.....頭打った?
檜垣 悠真
檜垣 悠真
男子の前髪急に上げるとか....

────────は?

え、ちょっと待って?




檜垣くん、前髪上げたらただの美少年なんですけど?
檜垣 悠真
檜垣 悠真
何?じろじろ見て...何か付いてる?
咲原 愛
咲原 愛
檜垣くん!
檜垣 悠真
檜垣 悠真
え?は、はい?
咲原 愛
咲原 愛
檜垣くんは、明日前髪を切って登校してください!
檜垣 悠真
檜垣 悠真
....何で?
咲原 愛
咲原 愛
きっと、クラスメイトは絶句するだろうね
檜垣 悠真
檜垣 悠真
めんどくさ
咲原 愛
咲原 愛
黙って
檜垣 悠真
檜垣 悠真
はい
そんな、初めて会話したとは思えない内容の話をして、その日を終えた。

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