第45話

私の好きな笑い方
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2019/07/12 15:25
司泉
はぁ!?何言ってんだよお前!!
司泉
それって、死ぬってことだろ!?
萩句
萩句
‥‥‥そうだ
司泉
だったら‥‥‥!!
萩句
萩句
だったら、何だ?
萩句
萩句
神がやらないとここら一体は消滅する。だからやるんだ
秋句
秋句
じゃあ僕がやるから!萩句は‥‥‥
萩句
萩句
兄さんは一回消滅した。もうそれで充分だ
そうだよ‥‥秋句が消滅しても戻ってこれたんだから萩句も‥‥‥!
秋句
秋句
でも、これは僕や愛ちゃんの力で萩句を救うことはできないんだよ!?
そん‥‥な‥‥‥
萩句
萩句
それでも良い。守れるものがあるなら、それで良い
萩句は真っ直ぐな目をしていた。
何にも揺らがない、強い意志が萩句の中にある。
咲原 愛
咲原 愛
せっかく会えたのに‥‥‥!もう会えないなんて嫌だよ!!
私は萩句に訴えた。
けれど、萩句は笑うだけだった。
萩句
萩句
‥‥‥ごめん
悲しそうに笑った萩句は、変わり果てた随批に向き直った。
萩句
萩句
‥‥‥‥共に、消滅だ
萩句は随批に手を伸ばし、触れる。


すると次の瞬間、随批の辺りが光った。
随批
あ″ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
随批は苦痛の叫びを上げる。

それと同時に、随批と萩句の姿が薄くなった気がした。
椿
椿
萩句!早くその手を放して!!
彼岸
彼岸
間に合わなくなる!
それでも、萩句は笑うだけ。
芍薬
考え直せって!
牡丹
今すぐやめてよ!
秋句
秋句
萩句‥‥お願いだ!
それでも、萩句は笑うだけ。
馬鹿者!!そこから離れろ!
どうして!?萩句!
夜曇
消滅の意味分かってんのか!?
それでも、萩句は笑うだけ。
非柿
非柿
誰かを犠牲にしてまで助かるのは嫌なんだけど‥‥‥!
出会ったばかりの檜垣くんに言われても、笑うだけ。

このままじゃ、萩句は‥‥‥!
木野 遥
木野 遥
萩句!!!
‥‥‥一瞬、理解ができなかった。
いつも大人しい遥が、萩句に怒鳴ったのだ。

萩句も目を丸くしていた。
木野 遥
木野 遥
自分が消滅して守れるものがあるのなら、それは名誉な死かもしれない
木野 遥
木野 遥
でも‥‥‥愛は?他の皆は?
木野 遥
木野 遥
置いていくの?‥‥‥‥そんなの、あんまりだよ!!
木野 遥
木野 遥
もっと考えてよ!萩句!!
木野 遥
木野 遥
愛を独りにするな!!!!
遥は息を切らしていた。それだけ、必死なのだ。


萩句は少し黙ってから、悲しそうに笑って口を開いた。
萩句
萩句
それでも、それでも、俺は守りたい
萩句
萩句
独りにさせたくないし、悲しい思いはして欲しくない
萩句
萩句
だけど‥‥‥それでも守りたい。大事な、大切な人、妖怪、兄弟を
萩句
萩句
今の俺は、それだけだ
萩句はへにゃっと笑った。


‥‥‥萩句の気持は揺らがなかった。

もう萩句の体は後ろが見える程透けていて、消滅寸前なのだ。


萩句は消滅して、私は生きる。

それが残されたたった一つの道。


‥‥‥そんな、そんな、悲しい結末がどこにあるのだろうか。
咲原 愛
咲原 愛
萩句!!
私は萩句に駆け寄った。


──────萩句に触れたい。

今なら間に合う。まだ、萩句は生きている。
だから諦めない。萩句は‥‥‥死なせない。
萩句
萩句
‥‥‥愛、もう良いよ
萩句は私の目に溜まっていた涙を拭った。



─────そして、一言だけ私に告げる。





















『 × × × 』



















咲原 愛
咲原 愛
え‥‥‥‥
萩句
萩句
じゃあな、愛
萩句
萩句
ありがとう
萩句は笑う。いつもの笑い方で。私の好きな笑い方で。

──────さよなら、と。











































そして、萩句は消滅した。


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