第41話

裏切り者
357
2019/06/02 09:28
随批
神使の癖に生意気な‥‥‥!
非柿
非柿
はいはい、あんたの神使ですが何か
随批の怒りは頂点を達していた。

それもそうだ。裏切り者が出たのだから。
まぁ、自分が悪いんだけどね。
随批
っ‥‥‥!
随批が檜垣くんに飛び付いてきた。

檜垣くんは私を巻き込まないように、後ろへ促す。
随批
お前だけは絶対に許さない‥‥‥!
非柿
非柿
どうぞご勝手に。あんたの体の一部が消えても良いのなら
随批
もう何でも良いさ!お前を殺せるのなら!!
随批は檜垣くんの首を絞め始めた。
咲原 愛
咲原 愛
檜垣くん‥‥‥!
非柿
非柿
耳、塞いで
檜垣くんはそう言って随批の頭に触れた。
随批
!?
そして、次の瞬間‥‥‥
!!
な、何!?この爆音!
木野 遥
木野 遥
頭痛い‥‥‥
司泉
ばっ、馬鹿!早く耳塞げ!!
私は檜垣くんやお兄ちゃんに言われた通り、慌てて耳を塞いだ。
それにつられて、皆も耳を塞ぐ。

‥‥‥これは、檜垣くんがやったの?

随批と同じ技を‥‥‥
随批
っ‥‥‥!
随批が倒れるのと同時に、爆音は治まった。
非柿
非柿
お前は人攫いの厄神であると共に、音と変貌へんぼうの神でもある
非柿
非柿
俺はその神使だ。お前の技を使えるのは当然だろ?
檜垣くんは、倒れた随批を見下ろした。
随批
許さない‥‥呪ってやる‥‥‥!
随批はゆらゆらと立ち上がる。
随批
非柿自身が無理なら‥‥‥お前だ!
そして随批は、お兄ちゃんに飛びかかり首に噛み付いた。
司泉
っ‥‥‥!?
司泉
やめ‥‥‥
すると、お兄ちゃんは脱力した。
咲原 愛
咲原 愛
お兄ちゃん!
随批
どうだ?力が入らないだろ?
随批
お前、なかなかの味だ
随批はお兄ちゃんをらい始める。
司泉
っあぁ‥‥‥!
お兄ちゃんの肩がどんどん随批に食べられてゆく。


私はそんな光景を、見ていることしかできなかった。

──────────怖い。

実の兄が大変な時に、足が、手が、体が震えて動かないのだ。


随批はボタボタと流れ落ちるお兄ちゃんの血すらも呑み込み、むさぼっていた。
木野 遥
木野 遥
やめて!!
遥はお兄ちゃんを助けようと手を伸ばした。

けど‥‥‥





────────グシャ


鈍い音と共に、左脚を失っていた。
木野 遥
木野 遥
っあぁぁぁ!!
遥はその場へ倒れ込んだ。
咲原 愛
咲原 愛
遥!!
遥に駆け寄ろうと必死に手を伸ばす。
けれどやっぱり、鎖は切れない。
遥!!
遥っ!
柊と件が遥に駆け寄ろうとする。

けれど、柊と件はすぐに倒れた。


‥‥‥遥と同じように、足を潰されたのだ。
随批
ふはははは!!
随批
もう誰も私に近付けない!
随批
さぁ、どうする?愛
随批に目が向けられるのと同時に、檜垣くんが私を自分の後ろに隠した。
随批
何故無駄なことをやっている?
非柿
非柿
‥‥‥無駄ではないだろ
随批
ほう?無駄ではないのか?
随批
この状況では、お前の能力は使えない
随批
だが、私は能力を使える
随批
‥‥‥私がお前を殺せば無駄になるだろう?
殺す‥‥‥!?
非柿
非柿
厄神‥‥‥まさに、お前の名に相応しいな
非柿
非柿
気が向いたら神使に変貌させ、飽きたら殺す
非柿
非柿
‥‥‥胸糞むなくそ悪い
檜垣くんの声は、いつもより低くて怖かった。
随批
何度でも言うがいいさ。どうせお前は死ぬ運命なのだからな!
随批
まあ、その前に‥‥‥こいつを喰らってからにしておこう
随批は、既に気絶しかけているお兄ちゃんの腕に歯を立てた。
咲原 愛
咲原 愛
お兄ちゃん‥‥‥!!
その時、はっきりと見えた。




『ごめんな、愛』


お兄ちゃんはそう、力無く笑っていた。


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