第42話

英雄
369
2019/06/26 05:09
『ごめんな、愛』


お兄ちゃんはそう、力無く笑っていた。





咲原 愛
咲原 愛
嫌‥‥‥‥
手を伸ばしても届かない。
目の前にいるのに、助けられない。

大好きな人が、無力な自分の目の前で死ぬ。

─────これほどの屈辱が他にあるだろうか。
咲原 愛
咲原 愛
嫌だ‥‥‥‥
お兄ちゃんの腕は既に無くなっている。


随批がお兄ちゃんの腕を食べ終わると、醜い笑顔を浮かべた。

そして、お兄ちゃんの心臓部分に歯を立てる。
咲原 愛
咲原 愛
やめて‥‥‥!!
随批
死ね
もう、終わってしまう。

何もかも全部。





私が、無力だから───────────







































































萩句
萩句
ったく、何勝手にやられてんだよ










─────────────え?




随批
!?
随批
誰だ!?
萩句
萩句
あー、生憎あいにく、あんたに名乗れる程良いご身分じゃないんでねぇ?
そこには、いるはずのない萩句がいた。





秋句
秋句
間に合ったぁ‥‥‥
椿
椿
わしのお友達に何してくれとんじゃぁぁ!!
彼岸
彼岸
口調変わってるのはもう突っ込まないよ‥‥‥。今はそれどころじゃないし
芍薬
妖怪食べるとかどんなシュミしてんだ?こいつ
牡丹
さぁ。よほどられたいんでしょうね?
芍薬
お前キャラ変わってね?
牡丹
そう?
芍薬
そう
萩句だけじゃない。秋句に椿、彼岸、芍薬、牡丹。

──────いなくなった皆がいる。


これは夢?

‥‥‥‥いや、夢じゃない。



だって、「きっと戻ってくる」って遥もお兄ちゃんも皆言ってたから。
随批
お前らは一体‥‥‥‥
萩句
萩句
今までともえサマのとこにいたからな。ケガレもりにきた神祓かみはらに教えてもらった
何語‥‥‥‥?
随批
神祓い師!?
木野 遥
木野 遥
神祓い師‥‥‥?
椿
椿
あー!遥!応急措置しただけなんだからあまり動かない!
木野 遥
木野 遥
あ‥‥‥はい
いや!俺はまだ戦える!
夜曇
いや、絶対に無理ですって
夜曇くん!?
夜曇
わっ‥‥‥な、なんですか‥‥‥‥
秋句
秋句
こら、夜曇。呪いを解いただけでまだ傷は治してないからね?
夜曇
あ‥‥‥はい
呪いを解いた‥‥‥?
彼岸
彼岸
待って‥‥‥まだ応急措置終わってなi‥‥‥
夜曇くん生きてた!!
彼岸
彼岸
うん、生きてるから。じっとしt‥‥‥
よかったぁぁぁぁ!!
彼岸
彼岸
‥‥‥
夜曇
諦めろ、彼岸
彼岸
彼岸
‥‥‥うん
司泉
手がある!!
萩句
萩句
応急措置して第一声がそれね
司泉
って、まだ痛い!
萩句
萩句
応急措置だからな
‥‥‥‥なんかもう滅茶苦茶だね。
随批
あれ?私、存在してる?
ほら。敵が困惑してるよ。

‥‥‥って、
咲原 愛
咲原 愛
敵忘れないで!?皆さん!?
萩句
萩句
あ。愛
咲原 愛
咲原 愛
何その道端で会った感
萩句
萩句
はは、嘘だよ
萩句
萩句
‥‥‥後で死ぬほど喜んでやるよ
咲原 愛
咲原 愛
何それ‥‥‥
萩句は元々笑っていたけれど次の瞬間その目が変わった。

‥‥‥‥笑っているのに、物凄く殺気立っている。


周りの皆もそうだった。



勿論、殺気を向けられている随批は体勢を整えている。

萩句
萩句
‥‥‥さぁ、られる覚悟はできたか?

その時の萩句はまるで、英雄だった。

皆を、私を救ってくれた世界一の英雄。

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