件は淡々とした口調で話した。
過去‥‥‥?
すると、件は初めて僕を睨んだ。
小さな‥‥変化‥‥‥?
笑っていた‥‥‥それは、良いことじゃないの?
それから、長い沈黙が続いた。
そして、それを破ったのは他でもない件だった。
件の言葉に、司泉は僕と件とアイコンタクトを取って、進みだした。
心の奥底には、まだモヤモヤが溜まっている。
──────はぁはぁはぁ‥‥‥
息が荒い。足が引き千切れそうだ。
もう走れない。
でも、もっと、もっと、もっと遠くへ逃げなきゃ‥‥
お母さんとお父さんの思いを無駄になんてしたくない。
もっと、遠くに─────────
どうしよう‥‥追いつかれた‥‥‥!
最、期‥‥‥?
そいつは私に、刀を振り下ろした。
無くなった。何もかも。
家は奪われ、両親は殺され、周りの目は冷たい。
いっそ、ここで素直に殺された方が良いかもしれない。
‥‥‥きっと、それが良い。
ごめんね。お父さん、お母さん。
二人に貰った命、ここで落とすことにします。
さようなら──────────
────────キィーン
突然、刀と金属が当たるような音がした。
私はその方を見上げる。
振り下ろされた刀をすんでの所で薙刀を使い止めていた彼は、私に背を向けながら優しく言った。
そう言って、私の恩人‥‥‥‥件は、私を殺そうとした奴等に薙刀を向けた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。