第36話

悲劇
368
2019/05/06 03:13
司泉
は!?柊と夜曇が天界で生まれたなんて聞いてねぇぞ!
当たり前だ。言ってないんだからな
件は淡々とした口調で話した。
司泉
言ってないってお前‥‥‥
夜曇はともかく柊がいる前で過去を思い出させるようなことはしたくない
過去‥‥‥?
木野 遥
木野 遥
過去に何があったの‥‥‥?
すると、件は初めて僕を睨んだ。
たとえ遥が俺たちの恩人だとしても言えない
柊の小さな変化に気づけなかったお前らなら当然知る資格も無い
小さな‥‥変化‥‥‥?
天界というワードが出た時はそんなでもなかったが、天界へ行くとなった時には物凄く笑っていた
笑っていた‥‥‥それは、良いことじゃないの?
柊は辛くなったり苦しくなったりすると笑う癖がある
今だってそうだ。笑っていただろ?
いつもの笑顔は見て分かるように、目が笑っている。けど、辛くなったり苦しくなったりした時の笑顔は目が笑っていない
お前らは、そんな小さな変化にも気付かなかった
司泉
じゃあ気付いたお前は何故止めなかった!?
夜曇と愛が危ないんじゃないのか?
柊だって、自分のことは後回しにして助けたいハズだ
司泉
そうかもしれねぇけど‥‥‥
けど何だ?
司泉
そ、それは‥‥‥



それから、長い沈黙が続いた。










そして、それを破ったのは他でもない件だった。
先を急ごう
木野 遥
木野 遥
えっ、でも、柊は‥‥‥
そのうち目覚める
件の言葉に、司泉は僕と件とアイコンタクトを取って、進みだした。



心の奥底には、まだモヤモヤが溜まっている。


























──────はぁはぁはぁ‥‥‥


息が荒い。足が引き千切れそうだ。



もう走れない。


でも、もっと、もっと、もっと遠くへ逃げなきゃ‥‥

お母さんとお父さんの思いを無駄になんてしたくない。


もっと、遠くに─────────
???
いたぞ!捕まえろ!!
あ‥‥‥
どうしよう‥‥追いつかれた‥‥‥!
???
このクソガキが!黙って随批様に従ってれば良かったものを‥‥‥
???
まあ良い。これで一族共々全滅だ!!
???
お前の父親と母親の最期は面白かったなぁ?
最、期‥‥‥?
???
自分の命を譲る代わりにお前を殺さないでくれだとよ
???
だが、そうはいかない
???
なんせ、裏切り者の一族なんだからなぁ!!
そいつは私に、刀を振り下ろした。
っ‥‥お父さん‥お母さん‥‥‥‥
無くなった。何もかも。

家は奪われ、両親は殺され、周りの目は冷たい。


いっそ、ここで素直に殺された方が良いかもしれない。

‥‥‥きっと、それが良い。



ごめんね。お父さん、お母さん。

二人に貰った命、ここで落とすことにします。



さようなら──────────





















────────キィーン



突然、刀と金属が当たるような音がした。



私はその方を見上げる。
???
命は無駄にするもんじゃない
振り下ろされた刀をすんでの所で薙刀なぎなたを使い止めていた彼は、私に背を向けながら優しく言った。
???
ここまで、よく頑張ったな
???
後は俺に任せろ







そう言って、私の恩人‥‥‥‥件は、私を殺そうとした奴等に薙刀を向けた。



覚悟しろ

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