俺の名前を呼びながらスマホを構える太我に嫌な予感がした。今一瞬思い出したくない光景が頭を過ったんですが。最近同じようなことあった気がするんですが。
画面には裸の俺。太我の指が再生マークを押した瞬間、絶対シラフで見たくないシーンが大音量で流れた。
咄嗟にスマホを叩いた。太我の手から落ちたスマホはベッドに着地して、問題ないと言うように卑猥な音を鳴らし続ける。拾おうとしたがいち早く太我が手に取った。
せっかく雰囲気良かったのにまた台無しだ。なんでいっつも服を脱いだところでアクションを起こすんだ。俺に詰め寄られ、太我がしどろもどろで答えた。
押し倒されて、両手首を片手で抑えられた。空いた方の手がすでに俺のケツを揉んできて、ものすごいデジャブを感じた。この前も抵抗できなかった。裸になった時点で俺の負けは決まってたんだちくしょう。
太我は例のごとくムカつく笑みを浮かべている。その手はだんだん割れ目に向かって、ついに指を突っ込まれた。俺は静かに終わりを悟った。
オトそうとしてるのか、いつもより指の動きが激しい。でも俺にだってプライドがある。この前は気持ちよくてつい「もっとしたい」とか言っちゃったけど、今日は絶対認めないんだから。せめて口だけでも抵抗を続けないと。
俺を抑えていた方の太我の手が離れて、放置されていたスマホを取った。
目の前にスマホが差し出された。ハメ撮り映像はおそらく終盤に差し掛かっていて、画面の中の俺の顔面は見るに堪えなかった。ぐちゃぐちゃのどろどろ、動物みたいにアンアン喘いでよがって自分でケツ振って。こんなの見たくないのに太我は「ほら」とさらに画面を近づけてきた。その間ももう片方の手は俺を責めまくる。
前立腺をこりこりされて盛大に潮を吹いた。お仕置きと言わんばかりに集中的に責められる。イってもイっても太我の手が止まる気配はない。
そんなこと言われたって「見たい」とすら言えない。悲鳴しか出ない。
ひたすら叫んでいたら、無限にも思えた快楽地獄が突然終わった。太我がじっと俺を見下ろしている。当の俺は頭が麻痺して何が何だかわからなかった。
中で指が僅かに動くのを感じた。それだけでも怖くて無意識に懇願が漏れた。太我がスマホの音量を上げた。
なだめるような声と、快感の余韻。頭がぼーっとする。
意地張ってるとかじゃなくて、ほんとに見たくないだけなんだけど。でもたしかにこのままの方が辛くて恥ずかしいのかもしれない。いやでも丸め込まれてる気もする。
逡巡してるうちに、また太我の指が少し動いた。急かされてるような感覚になった。今を逃したら永遠に指でぐちゃぐちゃされるかも、それはほんとにムリ。
必死にうなずいたら、ズポッと指が抜かれた。
スマホを持たされてうつ伏せにさせられた。おそるおそる画面に目をやったら、動画はもうとっくに終わってて、また最初から再生が始まっていた。動画の中の俺がカメラをじっと睨んでる。多分カメラを向けられてすぐの、まだ怒ってる俺だ。この後どろっどろにされるんだよね。
あーあ、また太我に言い包められちゃった。
腰を持たれて、バックで挿れられた。
前戯が長すぎたせいで挿れられた瞬間イった。あまりにも強い刺激に耐えられなくてうつむいた。けどすぐに太我に顔を掴まれて、むりやりスマホを向かされた。
太我が笑いながら奥を抉る。そんなわけない。俺は太我みたいな変な性癖持ってない。今だって嫌々付き合わされてるだけだ。
そう思いたいのに、太我が腰を打ち付けるたびにイってる。全身が太我を感じて悦んでる。
悔しい。恥ずかしい。なのに、なんでこんなに気持ちいの?
画面の中で俺がボヤいた。
太我に向けた言葉のはずなのに、なぜか耳を塞ぎたくなった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!