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第65話

相性(たいはる)
959
2021/07/30 09:32
晴人
晴人
バカ太我!
太我
太我
はぁ!?お前が
達也
達也
いいかげんにしろ!
達也くんに怒鳴られて口をつぐんだ。

撮影の合間、ちょっと元カノの話をしただけなのにハルが突っかかってきて、達也くんがコンビニから帰ってくる頃には喧嘩になっていた。
一度言い合いになったらどこまでもヒートアップする。最初は仲裁しようとしていた達也くんもさすがにブチ切れた。
晴人
晴人
だって太我が!
達也
達也
うるせぇ!お前ら恋人ならもっと仲良くしろ!
晴人
晴人
でも…
達也
達也
月一で喧嘩してんじゃん、お前ら相性悪いんじゃねえの
達也くんの言葉に、ぶちぶちうるさかったハルも黙った。
達也
達也
おら、撮影すんぞ
晴人
晴人
………うん…
太我
太我
……………?
撮影が終わって、喧嘩が再開されるかと思ったが、ハルはずっと静かだった。急なトーンダウンに戸惑った。しかしまだ言い足りてはいないのか、ハルは俺の家まで半ばむりやりついてきた。
二人ソファに腰掛けるもいつもより距離がある。なんなんだとイライラしてたら、ハルが話しかけてきた。
晴人
晴人
ねえ
太我
太我
なに
晴人
晴人
俺らって、相性悪いのかな
太我
太我
は?
ハルを見た。なぜかしょんぼりしていた。先程までの生意気でうざいこいつはどこへ行ったんだ。
ここで慰めればよかったんだろうが、喧嘩を引きずっていた俺はつい冷たい態度を取ってしまった。
太我
太我
まあ、良くはないんじゃねえの
晴人
晴人
えっ
太我
太我
喧嘩ばっかなのはほんとじゃん
付き合う前は…付き合い始めた当時も、喧嘩なんてほとんどなかった。そもそもこいつは怒らないタイプなのだ。なのに恋人になってしばらくして、ハルは俺に対してだけ怒りっぽくなった。気づいたら喧嘩が増えた。
太我
太我
合わないのかもね
そう言って、呆気に取られているハルから再び顔を背けた。
ほんとはわかっている。なんで喧嘩が増えたのか。でも俺はわざと言わなかった。もっと落ち込めばいいと思った。
ハルはもう何も言わなかった。言い過ぎたかもしれない、といまさら気になった。
太我
太我
………あー…えっと、
ハルを向き直して驚いた。ハルは顔を覆って肩を震わせて、泣いているのが明らかだった。
太我
太我
ハル!?
晴人
晴人
…ぅっ……
太我
太我
ちょっ…泣くなよ!冗談だろ!
晴人
晴人
太我……俺嫌い…?
太我
太我
えっ!?
晴人
晴人
相性悪いのやだ…?………付き合うのやだ…?
太我
太我
は!?いやそんなこと、
晴人
晴人
嫌いにならないで……
どうやら「相性が悪い」と言われたのを相当気にしているらしかった。俺が冷たくしたのもあるだろうけど、にしたって泣くほどのことだろうか。
そうは思いつつもハルの涙には勝てず、頭を撫でた。
太我
太我
別に、相性とかそんな関係ないだろ…
晴人
晴人
だってぇ……だって…きっ、きらわれたく、ない……
太我
太我
誰も嫌いなんて言ってないじゃん
晴人
晴人
だって…!
泣き止みそうにないから抱きしめた。イライラが急速に冷めていく。こんなにハルが傷つくなんて思わなかった。あんなこと言わなきゃよかった。
晴人
晴人
ほんとは大好きなのに……けんかしたくないのにぃ…!
太我
太我
知ってるよ。俺もハルが大好きだよ
ハルの泣き声がいっそう大きくなった。いよいよ後悔でいっぱいになった。
太我
太我
たしかに喧嘩は多いけど…俺らは相性悪いわけじゃないよ
晴人
晴人
……そうなの…?
太我
太我
そうだよ。だって喧嘩の原因思い出してみろよ。大体どっちかの嫉妬じゃん
しょうがないから、さっき黙っていた、喧嘩が増えた理由を教えてあげた。ハルがきょとんと俺を見上げた。
太我
太我
お互いが好きすぎるから喧嘩しちゃうんだよ。こんなん恋人でいるしかないだろ
それに喧嘩したってちゃんと毎回仲直りしてるんだし。

ハルはやっと納得したようだ。俺に縋ってわんわん泣いてるけど、「大好き」とか「よかった」とか言ってるから、多分もう大丈夫だろう。
太我
太我
ごめんね…いじわるしすぎたね…
晴人
晴人
ううん、いいの…俺もごめん
太我
太我
大好きだよハル
晴人
晴人
俺も太我大好き
太我
太我
明日達也くんに文句言おうぜ。俺らは相性抜群だってさ
晴人
晴人
うん!
ハルの笑顔を見ながら考えた。
喧嘩が多いと、たしかに合ってないように見えるかもしれない。だけど俺らはこれでいいのだ。だって喧嘩したあとは、お互いをもっともっと大好きになっているから。

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