ラジオで結婚願望の話が出てから、なんとなーく落ち込んでいる。結婚願望あるけど、子どもだって欲しいけど、ムリだってわかってるから。普通に籍入れて普通に結婚式挙げて、それを普通に祝福されている人と自分を比べてしまうから。
めんどくさそうに返されてショックを受けた。きっとそうなんだろうなって思ってたけど、わかってても傷つくもんだ。
俺のテンションがあからさまに下がったせいか、達也くんが俺の隣に来た。
達也くんの言葉に少し安心した。でも俺が達也くんと結婚したいことは変わらない。なんで同性だとできないのかなって、最近ずっと考えてる。
俺をチラッと見て達也くんが苦笑した。
ふっと微笑まれて心臓が破裂しそうになった。びっくりして達也くんに詰め寄った。
それって内縁みたいなことでしょ!?毎日達也くんと一緒…俺がご飯作って、一緒にお風呂入って、達也くんに髪乾かしてもらって毎日おんなじベッドで寝て……
本気で期待したのにひどすぎるよ。俺はもう想像しちゃった。達也くんと一緒に住めたらどんだけ幸せかなって想像しちゃった。ムリって言われたって引き下がれない、冗談だろうと言い出したのは達也くんだもん。
あっさり一蹴されてしまった。
そりゃ俺だってわかってる。達也くんとの関係がファンにバレたら大変だってこと。同棲にどれだけリスクがあるかも。だけど、男同士だからってだけでこんなに窮屈な思いしなきゃいけないなんて、世の中は不公平すぎると思う。
ぎゅーっとハグされたけどなんだかなぁ。俺、丸め込まれてない?
過った疑問は、達也くんが何気なく呟いた一言でどこかに吹っ飛んだ。
ほんと、さらっとこういうこと言うんだから…
当たり前のように嫁と呼ばれて文句を言う気も失せた。結婚も同棲もできなくても、達也くんは俺のこと奥さんって思ってくれてて。それならたしかにこのままでもいいのかなって思っちゃった。
恥ずかしくて嬉しくて照れてしまった。達也くんはそれに気づいてニヤニヤしている。ムカつくからキスしてやったら達也くんが赤くなって、ちょっとだけスッキリした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。