『だァ────!!何で邪魔するのサ太宰!!』
私はあなた、日本生まれ外国育ちの武装探偵社社員。
今日も今日とて、太宰に本を読む邪魔をされている所である。
「えー、だってあなたが構ってくれないんだもの」
私の座っている革張りのソファの肘掛けに頬杖をついて本を片手に私を見詰めるのは太宰、自称・私の生涯の伴侶である。
自称、と云うのがミソだ。
『読んだ後に構うって云ったよナ!?』
「そんなに待てる訳が無いだろう」
子供っぽくへの字口で訴える太宰だが彼が本気では無い事を私は知っている。
『フン、じゃあ一生構ってやらないんだからネ』
こう云えば直ぐに解決する事を。
「じゃあ私があなたを構う事にしよう!」
……何時もなら、という但書が付くと云う事を、私は見落としていた。
『はァァァァァァ!!!!!???』
…… …… ……
『おい、太宰止まれっテ!!本ト何処に連れて行く心算だヨ!?』
「ん?私の家だけど?」
『ふーん……』
『太宰の家ェェェェェェ!!!!!?』
「嗚呼。帰って存分にあなたを愛でる!」
『愛でるっテ……嫌な予感しかしないんだケド……』
…… …… ……
『……』
「愛でる、と聞いてあなたは何を想像していたんだい?……教えてくれるかな?」
嵌められた……
云っても云わなくても太宰の思惑通りだ……
『……本ト、食えない奴だヨ太宰……』
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!