第37話

光るそれは綺麗だった
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2021/02/27 14:00
「ドサドサッ」
少年に影が被さり、透けた瞳は消えた。
私の左側からは束ねられた髪が下へこぼれた。

錐を握りしめた手の、細い手首を草むらへ押し付ける。
男の子
なんっで・・・!!
自分に覆いかぶさった私を彼は退けようと必死にもがいている。
でも私は年下の子に負けるような女じゃない。
男の子
ここから出られるのにっっ
あなた
ダメ!その方法はダメ!
男の子
だからなんで!!
ちょうど夕日が眩しかった。
今度は私の赤茶の髪が透けていく。
あなた
勘、本能よ!ダメだって言ってんの!
あなた
他にも方法があるはずだから・・・!
またまた根拠の無い言葉が口をつく。
でもこの核を壊して2人共戻れる気がしないのは確かだ。




男の子
あのまま行けば躊躇わずに済んだのに・・・
私を退けようと暴れることを止め、錐を握りしめる手が段々と開いていく。私もゆっくり押さえる力を抜いた。
離された錐は地面を転がり、袖から出た白く華奢な腕は顔元へ運ばれる。
腕に目が塞がれる直前、光る涙を見た。

綺麗だった。
男の子
僕にどうしろって言うんだよ・・・!!
そのまま彼は泣いてしまった。
私は覆い被さるのを止め、隣に座った。
風に揺れる幼い少年の柔らかい髪と頭を撫でた。







男の子
あのまま生きるなら1人くらい死んでもいいと思った・・・
男の子
それで解放されるなら・・・
震える声でそう言った。
やっぱ殺る気だったのか。
男の子
でも、でもっっ





夢の中の夕日は一向に沈まない。空はただ雲が流れるだけ。







男の子
こんなにも心の中が綺麗な人を殺せるわけがないっっ!
男の子
死んでもいいのは汚い奴らだ!!
あなた
・・・・・・うん、ありがとう。
彼の事情は知らないけど、悲痛な叫びは十分心に届いた。
あなた
そうなんだよ。
あなた
死んじゃいけない人って、
たくさんいるんだよ・・・
もう少しだけこうしていよう、そう思って私も草むらに寝っ転がった。両手を頭の下で組んで少年の方を見る。






あなた
・・・えっ?




横に寝転ぶあの子、頭を撫でていたあの子はいなかった。

急いで立ち上がり、辺りを見渡す。
あなた
どこーーーーっ!?
私の声は橙色の海に沈んでいく。
あなた
聞こえるーーーー!?
息が続かなくなって声を止めた途端に強風が私を呑み込んだ。
それもかなりの暴風。でも夏の匂いは薄かった。
あまりの強さによろけた瞬間・・・










あなた
はっ!!!
目を開けると目の前には夢の中の少年。
男の子
よ、良かった!
あなた
ここにいたの!
あなた
!!!
驚くほど強い鬼の気配だった。

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