私は慌てて男の子の方へ駆け寄る
男の子が言う「あの人」は、宇髄さんだった
男の子が返事をし終わる直前、
背中の右下から左上にかけて激痛がはしる
爪だ、、鬼の爪、、、
なんて速さなの、、、
皮膚が感知するのが追いつけなかった
痛い、、、
男の子への返答に「大丈夫」と言ったけど、
なんだか自分に言い聞かせてる気がした
痛くない、痛くないと
家に入ったのを確認して、玄関を閉める
さぁ、斬ろう
背中の痛みは考えないようにしよう
ただ斬ることだけを 考えよう
あ、ご存知ですよね。
地面が海のように青くなる
そして、亀が浮かび上がったかと思えば泳ぎ回る
亀を踏まないように地面を駆け回る
『 サァァ 』
なんて数!
気持ち悪い程のたくさんの亀
もはや水面なんか見えない
これを避けてたら首を斬れない!
どんどん鬼から離れていく感覚
しまった
踏んじゃった
着地先に亀が泳いできて
亀を踏んだ
見えない何かに引き寄せられてく
地面をするすると滑っていく
変に動いたら体勢を崩して転んでしまいそう
どんどん鬼の気配が強くなってく
どうしよう、まずい
考えなければいけないのに頭が考えることを放棄しだした
宇髄さんの声と同時に響き渡る爆発音
プツンと何かが切れたような感覚がして、
引っ張られる力が無くなった
あぁ、私は助けてもらってばかりだ
役に立てない
悔しくて、唇を噛む
刀をより一層強く握る
焦ったような鬼の声に反応して見てみると、
暗闇でも光る銀髪に、
乙姫のような姿をし、
手首に金の輪をたくさんつけた
“ 鬼 ” がいた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。