今日、任務でここに来たわけなんだけど、
最近、夜に火事が多発しているらしい。
それが普通の火事じゃなくて、
消火しようとしても消えないらしくて、
ひとつの家を包み込むように燃えるらしい。
包み込むように燃えるから、家の中に入って救助することもできない。
朝になると火は自然に消える。
そして、燃えていたはずの家はどこも焼けることなく、変わらずに建っているらしい
その代わりに、家の中には血がとんでいて、
ばらばらになった体や、骨が落ちている。
これ、絶対鬼だよね
火事は血鬼術だね
みんな毎夜毎夜怯えながら過ごしているらしい。
教えてくれた方もすごく怯えていた。
何も見えない暗闇から私たちを連れ出してくださいと、体が言っていた。
大丈夫、今日私が暗闇に飛び込んで光になるから。
今日はどこも燃やさないから。
私の故郷を暗闇に飲み込まれてたまるか
ヒリヒリする 鬼がいる
私の触感は特徴的で、鬼がいるとヒリヒリする。戦いに支障が出るほどではないけど。
急げ急げっ
手のひらで火の玉をころがしながら歩いている鬼がいる
投げる気だな!火の玉を!!
あれが家に当たるともえる??
私はドンッと地面を蹴って、火の玉に向かって走る
あれって刀で切れるもんなのかな!?
でもやってみるしかっ!!
『 スッ 』
斬れたっ!?
家は燃えてないから、大丈夫そう
鬼はまた火の玉を作って、私に向かって投げてくる
一気に全て真っ二つにする
またひとつ火の玉を作って、投げる
血鬼術って言ったよね?
それにしてはさっきと変わらない気がするけど
ひとつだった火の玉は次々分裂していく
どんどん数が増えていく
なるほどね
ひとつからどんどん分裂していくんだ
もう50は超えたんじゃないかな
一気にこっちに向かってくる
綺麗に一つ一つ流れるように刻む
鬼は炎でできた弓矢を作り出す
矢先には火がついている
あれを飛ばすのかな?
でも確か、川蛍って言ったよね??
斬ったら、もしかして、
そんなこと考える暇もなく、火のついた矢が飛んでくる
初めは矢として飛んできたが、こっちに近づくにつれて、矢は消えていき、火だけがこちらに飛んでくる
斬ったら多分、川蛍だったら、あたりに火が広がって生臭い匂いがして、ぬるぬるしたものがとぶはず
だから一つ一つ弾いていく
そろそろ頸を斬ろうかな
鬼の体から炎が出てる
あれって近づいたら火傷する??
私を誰だとお思いで?
『 ドンッ 』
『 ボト 』
よし、斬れた
でも熱かった、、
火傷はしてないみたい
あ、鬼が何かぶつぶつ言ってる
頭の方へ歩いていき、鬼の顔を覗き込むようにかがむ
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。