にこにこと笑う芭琉さんにつられて私も笑う。
段々とはぐれたくらいで泣いてしまった自分が大人気なくって恥ずかしくなってくる。
どうしてあんなに懐かしく感じたんだろう。
私、依存しちゃってるのかな・・・
そう言って地面にバラバラに横たわる花火を集めて紙袋にしまってくれた。
紙袋を左手に持ち、右手を差し出した芭琉さん。
私はゆっくりそこに手を重ねる。
そして、橙色に染まる商店街を抜けて家への道を歩き出した。
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私が避けると弟が火を灯したロウソクを運んで地面に置いた。水は用意してあるので準備は整った。
日は少し前に沈んで、西の方が紫色に染まっている。
私たちは庭に出て、蚊取り線香を焚き待っていた。
お父さんは線香花火を手にしてそう言う。
我が家は毎年夏になると欠かさず花火をするのだ。
幼い頃から芭琉さんも呼んでやっていた。
今年は芭琉さんのご家族も一緒だ。
『シュッ』
私はマッチを擦り、提灯に火を灯した。
一気に雰囲気が出る。
そうして私たちは各自手持ち花火の先を火に当てる。
火が移ると先は丸くなっていき、周りには薄く平たい炎が出る。それも段々と消えていき、より激しく線が暴れている。
暗闇でパチパチと弾ける。この音がなんとも心地いい。
私は昔からこの一時も形をとどめない、手に収めることの出来ない線香花火に美しさを感じてきた。
私は何故かその単語が引っかかる。
気がつけば『ボトッ』と音がして火は消えていた。
地面に落ちた玉は黒くなっていく。
私の手元は真っ暗になっていた。
真っ暗・・・・・・?
私は勢いよく立ち上がった。
提灯に照らされた笑うお父さんの顔が見えた。
その奥にはお母さんも。
私も笑ってもう一本花火を手に取り、火をつけた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!