第5話

5th
79
2021/01/22 10:57
玄関で待っていたのは侑くんだった。
西宮 希望
西宮 希望
侑くん
宮 侑
宮 侑
帰ろうや
西宮 希望
西宮 希望
え、でも…
こんな時間まで待っててくれたのだろうか。
そう思うと断りきれず…
西宮 希望
西宮 希望
分かった
私と侑くんは一緒に帰ることになった。
少しだけ気まずい時間が流れる。

私のこと友達としてしか見れないと言った侑くん。

それがずっと頭に引っかかっていた。
それでも私と帰ると言うんだ。
何か話でもあるのだろうか。
宮 侑
宮 侑
希望
西宮 希望
西宮 希望
ん?
宮 侑
宮 侑
インハイ予選…
見に来てくれへんか?
それを言うためだけに私を待っててくれたのだろうか。
西宮 希望
西宮 希望
準決勝からしか見に行けへんのよな
宮 侑
宮 侑
え、そうなん?
西宮 希望
西宮 希望
そう、やねん
侑くんは私の父が個展を開くことを知らない。
というよりは、まだ侑くんに伝えていないのだ。
宮 侑
宮 侑
じゃあ、絶対勝たなあかんな
西宮 希望
西宮 希望
え?
宮 侑
宮 侑
準決からなら、それまで
負けるわけにはいかんやろ?
それに決勝で勝って優勝して
ええとこ見せたいしな!
(なんなん?思わせぶりなん?
 ええとこ見せたいって、それ
 好きな子に言うことやで…)
西宮 希望
西宮 希望
頑張ってな
宮 侑
宮 侑
おう!
キラッと光る笑顔が眩しかった。
多分私はこの笑顔が、好きなんだと思う。













侑くん、ほんま眩しいなあ…













西宮 希望
西宮 希望
好きやなぁ…
そう口に出ていた。
口に出すつもりのなかった私の心の声。

ハッとした時、彼は驚いた顔で私を見ていた。
宮 侑
宮 侑
えっ
西宮 希望
西宮 希望
…え!?
宮 侑
宮 侑
今、好きって…
誤魔化さないと、と思った時
彼はごめんと謝った。
宮 侑
宮 侑
ごめん
西宮 希望
西宮 希望
え…
宮 侑
宮 侑
俺、希望は友達としてしか
見れへんねん…
分かってるねん、そんなこと
宮 侑
宮 侑
ごめ…
西宮 希望
西宮 希望
別に侑くんが好きなんじゃないからな!
む、昔の好きな人に似てただけやから!
思い出してもて口に出ただけやから!!
宮 侑
宮 侑
え?
彼はキョトンとしていた。
少しでも誤魔化せただろうか。
侑くんが初恋なのに嘘をついてしまった。
宮 侑
宮 侑
なーんや
西宮 希望
西宮 希望
だから、今のは忘れて
泣きそうになった。
直接言われると結構辛いな…
宮 侑
宮 侑
わかった
西宮 希望
西宮 希望
…うん
宮 侑
宮 侑
どうしたん
西宮 希望
西宮 希望
え?
宮 侑
宮 侑
泣いて…
私の目からは涙が溢れていたのだ。
西宮 希望
西宮 希望
目、乾燥しただけ…
何もないから…
宮 侑
宮 侑
泣いてるやん
西宮 希望
西宮 希望
だから!かん…、
宮 侑
宮 侑
希望
彼は私の目を見て言った
宮 侑
宮 侑
俺の事、好きなんか?
もしこれで、私が頷いたり「好き」と言えば
多分、侑くんとの関係も終わる。

侑くんは、私を"ただの友達"としか思ってないから。

侑くんとの関係が終わるより
友達でもいいから、
まだ侑くんと話したい。
一緒に帰りたい。
傍に居るのが私じゃなくてもいい。

ただ、彼との関係を壊したくない。
西宮 希望
西宮 希望
…好き、やで
友達としてな!
私の嘘は、彼にわかるのだろうか。
頑張って誤魔化したつもりだけど、
彼はそれに気づいてくれるのかな。


いやきっと、「そうやんな!」と言って
笑うんだろう、彼は。
今はそれでいい。
この関係が終わるより、マシだ。



____________________

私はその日から、
彼への気持ちを心にしまって
過ごすことにした。
印藤 寧々
印藤 寧々
希望
西宮 希望
西宮 希望
あ、寧々
今日はインターハイ予選準決勝。
稲荷崎は準決まで勝ち進み、
今日は全校応援のため、バスで会場まで移動する。
印藤 寧々
印藤 寧々
はあ〜、勝てるやろか
西宮 希望
西宮 希望
大丈夫やって!
信じようや!
印藤 寧々
印藤 寧々
せやな!
昨日、県4強が決まり
準決勝は前年度県3位の高校と対戦する。


試合を見に行くのはこれが初めてじゃないのに
何故か緊張してきた。

今日優勝すれば、インターハイ…
稲荷崎はとても強い、けど油断は禁物だ。

________________________

会場に着いてから
私たちは応援席まで移動した。
女子生徒2
女子生徒2
あ、公式練習はじまる!
女子生徒1
女子生徒1
きゃ〜!侑先輩〜!
後輩女子の黄色い歓声が上がる。
印藤 寧々
印藤 寧々
今日も大人気やな、双子
西宮 希望
西宮 希望
寧々は嫉妬とかせんの?
印藤 寧々
印藤 寧々
せんわけないやろ!
西宮 希望
西宮 希望
そうですよね〜…
侑くんと同じくらい人気なのが治くん。
まあ、双子なのでファンが同じくらい居るのだ。
公式練習を見ていると
双子がこちら側に手を振っている。

その度に後ろから黄色い歓声が上がる。

双子人気の凄さを改めて感じた。
國久 絵梨花
國久 絵梨花
あ、希望さん
西宮 希望
西宮 希望
は、はい?
私に声を掛けてくれたのは
美術部顧問の 國久 絵梨花(くにひさ えりか)先生だった。
印藤 寧々
印藤 寧々
先生!
國久 絵梨花
國久 絵梨花
あら、寧々さんまで!
西宮 希望
西宮 希望
どうしたんですか?
國久 絵梨花
國久 絵梨花
あ、準決勝から決勝の間で
話したいことがあるんやけど…
西宮 希望
西宮 希望
あ、分かりました…
國久 絵梨花
國久 絵梨花
終わったらまた声掛けにくるし
西宮 希望
西宮 希望
はい!
頑張って応援しましょうね!と言って
先生は自分の担任のクラスのところへ行った。

(話ってなんやろ…)
_______________________

先生の言っていた話が、どんな話なのか気になるけど
今は応援に集中しなければならない。


















(あかん、気になってまう…)














_______________________

結局ずっと気になったまま準決勝の応援を終えた。
試合は 2-1 で勝利。決勝進出だ。
印藤 寧々
印藤 寧々
やった!!!
西宮 希望
西宮 希望
決、勝…
印藤 寧々
印藤 寧々
キレッキレやったなあ!
西宮 希望
西宮 希望
ほんまになあ…
印藤 寧々
印藤 寧々
なあ、希望
西宮 希望
西宮 希望
ん?
印藤 寧々
印藤 寧々
さっきから様子おかしいで?
西宮 希望
西宮 希望
え?
印藤 寧々
印藤 寧々
先生来てからなんか…
西宮 希望
西宮 希望
ちょっと気になってもて…
印藤 寧々
印藤 寧々
いい話やとええな…
西宮 希望
西宮 希望
せやな…
2人で話していると、先生がやってきた。
國久 絵梨花
國久 絵梨花
希望さん
西宮 希望
西宮 希望
あ、はい
印藤 寧々
印藤 寧々
…荷物見とくな!
西宮 希望
西宮 希望
ありがとう
私は先生の後ろをついていく。


















この後の先生の話が私の人生を変えることになるとは、この時は思ってなかった。

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