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私の"唯一の恋"やねん
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稲荷崎に入ってから
もう1年が経ち、私も2年生になった。
仲のいい友達も出来たし
クラス替えもあったけど
その子らと離れんで済んだ。
部活もそれなりに充実してて
何回かあったコンクールで
何回か入賞できた。
そんな実力があるわけでもないねんけどな。
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私は西宮 希望(にしみや のぞみ)。
稲荷崎高校に通ってます。
美術部に所属していて副部長やらせてもらってます。
私は短所しかない。
内気やし素直じゃないし人見知りやし
心開いた人としか笑い合ったりできひん。
そんな私の心を開いた男子が現れるなんて
この時の私は思ってなかった。
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隣の席の宮 侑(みや あつむ)くん。
私の好きな人。
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私が彼を好きになったのは
約半年前。
バレー部の試合を見に行った時だった。
友達の 印藤 寧々(いんどう ねね)に誘われて
バレー部の試合を見に行ったのだ。
全国大会につながる大事な大会だったみたいで
私たちが見に行ったのは準決勝と決勝だった。
本当は用事があっていけない予定だったのだが、その用事が無くなったことを寧々に伝えたら、一緒に行こうと誘われたのだ。
本当にたまたま見に行った試合で
私は彼を見て一目惚れした。
あんだけ楽しそうにスポーツをする人を
私は初めて見た。
会場にいる選手の誰よりもキラキラして見えたのだ。
その時、話すこともなかったのに
今こうやって隣の席になれていることが
奇跡だと思った。
話すのも緊張する。笑顔も絶対引き攣っている。
でも、彼の笑顔を見ると私も自然と笑顔になれる。
彼に一目惚れをして半年。
さっきの会話が私たちの初めての会話だった。
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ホームルームが終わった。
今日は始業式なので授業は無し。
私は寧々と帰ろうとした。
扉の方から聞こえてきた声は
侑くんの弟?兄?
どっちがどっちかわからないけど
双子の片方の、治(おさむ)くんの声だった。
治くんとは結構仲が良い。
1年の時同じクラスで同じ委員会だったから
関わることも多かった。
彼は話してみたら結構楽しい人だと気づいて
彼には心を開くようになった。
あと、もう一人。
角名 倫太郎(すな りんたろう)くん。
彼とも同じクラスで仲良くなったのだ。
侑くんはそう言って
カバンを持って扉に向かった。
その前に、私の方に振り向いて
そう言って治くんと体育館に向かった。
突然のことで頭の中で処理しきれなかった。
侑くんのあの笑顔で私の思考が一瞬止まった。
私は急いで準備をして寧々と一緒に
美術室に向かった。
彼女の言った言葉、
最初はちょっと理解できなかったけど
徐々に理解していって私は顔を赤くした。
なぜなら今日初めて彼と話したから。
まだお互いのことよく知らないのに
告白とかできない。恥ずかしい。
そんなこと言われても話されへんねん…
と、思いながら準備を進めて
コンクールの課題に取り組んだ。
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今回のコンクールの課題は「恋」
そんなもん分からんとか思いながらも
私なりの「恋」を描いてみた。
だって、侑くんが初恋の人やし。
彼女はある人の名前を口にした
寧々はたまに無理なことを言ってくる
私は普段制服姿の彼しか見ない。
私が好きになったのは
試合中の彼。
誰よりも試合を楽しんでキラキラして見えた彼だ。
そう、あの時だ。
話したのも今日が初めてなのに。
(だって試合してる侑くん見に行けるねんろ?
そんなん行くしかないやん!!!)
浮かれてるわけではない。けど
嬉しくて仕方がなかった。
練習試合は土曜日にある。
寧々とまた試合を見に行くことにした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。