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第4話

👽
1,185
2020/09/20 15:09
また始まった。
私の椅子を何かのリズムで叩いてくる。

これは私の後ろの席、鶴房汐恩による

授業に飽きたという合図。
汐恩は窓際の一番後ろで私はその前。


汐恩は授業中退屈になるとよく話しかけてきたり手紙を回してきたりする。

特に数学と社会の科目。

汐恩はその辺が嫌いらしいんだけど、今やっている世界史の先生は怖い。

汐恩「なあ、外見て」

あなた「ん?」

汐恩「翔也、あいつ髪の毛おかしいんだけど」
翔也っていうのは私の中学からの友だちで汐恩の部活仲間。

汐恩が指さす方を見ると、髪の毛を上で結んでりんごみたいな頭をしている翔也がいた。
あなた「ブフッ」

思わず吹き出してしまった。
汐恩「ちょっ」

先生「おいそこ、話聞いてるのか」

あなた「あっすいません」

先生「榎本と鶴房、授業終わったら来い」

あなた「はい…」
こうやっていつも怒られる。

でも汐恩とふざけるこの時間が意外と好きだったりする。

そんな時間も明日で終わり。

席替えだ。


ちょっと寂しいなあ、なんて。







次の日。
この授業が終われば席替え。

一晩考えたが、私は汐恩のことが好きみたい。


でも今更遅いかもしれない。

席が離れたら今までみたいに話す機会もなくなるのかなあ。

つまんないなあ と思って窓の外を見る。


その瞬間、背中に何かを感じた。
汐恩が私の背中に文字を書き始めた。

2文字が繰り返し書かれている気がする。


え…

もしかして

好き?

まさか。

もう一度冷静になって考えようとするが、やはり 好き と書いている気がする。


そのうち、汐恩が書くのをやめた。

少しして手紙という名のノートの切れ端が回ってきた。



何書いたかわかった?



うわ…

困った。
好き って書いていたような気もするけど勘違いだったら死ぬほど恥ずかしい。

5分くらい悩んで、

わかんない

そう書いて手紙を回した。

その手紙はすぐに返ってきた。
四つ折りのそれを開けてみると。



好き


付き合って




一瞬のうちに自分の顔に熱を帯びるのがわかった。
嬉しすぎて、この真っ赤になった顔を先生に見られないように手で覆う。

後ろにいる汐恩にはバレバレかもしれないけど。




すぐに私も返事を書く。




私も好きだよ


これを読んだらどんな反応するのかな。
考えるだけで自然と笑顔になってしまう。


緩む口元をおさえながら

私は汐恩に再び手紙を回した。



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